皆様こんにちは。今回もワンバイブスのサイトに訪れて頂きありがとうございます。
今回は、歌の表現力について。歌う時の感情の込め方についてです。
最近、ライブ会場でのMCで、他スクールの発表会を観て、そしてレッスンの中で生徒さんとの会話の中で出てくる話題がこれです。皆さんそれぞれの立場から、いろんな意見を出していますね。とても良いことだと思います。
そこで僕も、
ということについてお話しようと記事にします。
歌は感情を込めないで❓❕発声は感情をコントロールして♪
今回の件は、言い方を変えると上のサブタイトルのようになるんですが、あなたはどう感じますか?
ごもっともです。
今回の記事に関しましては、正しい正しくないは教えているトレーナー、受ける生徒さん、ボーカリストの考え方によって異なります。なので、まず、いろんな意見があるよ!といった前提で話を進めていきますね。
あなたの歌の表現力養成のための判断基準としてください。
さて、いろんな立場はあると判断しますが、室長は次のような立場と方針をとります。
✅ 歌は、感情を込めて歌っても、込めなくてもどちらでもよい。
込めるか込めないかは、曲のジャンルやパート、歌い手の体調による。
✅ 発声練習も、感情を込めても込めなくてもどちらでもよい。
込めるか込めないかは、歌い手の体調、ボイストレーニングの習得段階による。
どうしてこのような立場をとるのか?
ひとつずつ見ていくことにしましょう。その前に前提となる事についてお話を・・・。
ボーカリストが感情について知っておきたいこと
まず、ボーカリストが感情ということをどのようにとらえているかです。感情 (affect)は、その人本人から出てくるエネルギーの状態を表すレベルです。いろんな分野でいろんな言われ方をします。
その感情の意味範囲を次のように分けている分野がありましたので、僕も準じようと考えました。感情を考えたときに、僕にはこの考え方が一番しっくりくるからです。
●emotion(エモーション:情緒)は、比較的強く出て、急にドカンと変化する感情
●mood(ムード:気持ち)は、長時間持続する穏やかな感情
●feeling(フィーリング:情愛)は、同姓異性を問わず抱く感情
これをもとに話を進めていきますね。
歌うときにも、情緒(以下、エモーション)、気持ち(以下、ムード)、情愛(以下、フィーリング)を分けて考えると、興味深いことに気づきます。
自分の感情とどう向かい合うか?歌編
例えば、あたながある曲を歌ったとします。それは、ボイストレーニングのレッスンで現在進行中の曲でしょうか?それとも久しぶりに歌う曲でしょうか?または、十八番(おはこ)で歌っている曲でしょうか?
【十八番(おはこ)】
箱に入れて大切にしておく意から、市川家の家の芸歌舞伎十八番の台本を箱入りで保存したことからきている、ともいわれる。
① 最も得意な芸。得意とする技。じゅうはちばん。
② (転じて)その人のよくする動作・行為や口にする言葉。くせ。引用(一部翻案)●
辞典・百科事典の検索サービス – Weblio辞書:三省堂 大辞林 第三版 より
それに、あなたの現在の体調によって、歌うとき、エモーションが大きく出るのか、ムードやフィーリングに傾いて歌うのかで異なります。
演劇やNLPの世界で、アソシエイトとディソシエイトという用語がありますが、これに近いかもしれません。
▼参考サイト
- エモーション(情緒)=アソシエイト気味。主観的に入り込んでいく。
- ムード(気持ち)=ディソシエイト気味。どちらかというと客観的で俯瞰した状態。
- フィーリング(情愛)=アソシエイトとディソシエイトを行ったり来たり。
なので、状況や状態によって感情の入れ方が変わっても、何ら問題ないと考えています。あなたも経験あると思います。
同じ曲をレッスンで歌っている時にトレーナーから褒められた場合、その曲をカラオケで歌っている時、ライブに向けて練習している時、本番リハーサルの時、ライブ本番の時・・・。
全く同じ感情で歌っていませんよね。ひと言で感情と言っても、揺れていると判断します。
それを均一化、安定化させるのがプロの歌唱とも言えます。
自分の感情とどう向かい合うか?発声練習編
次に発声練習です。発声練習はスケール(音階)で行なうものと思い込んでいませんか?ここで提案します。コードを聴きながら発声練習してみてください。
僕はレッスンでは、生徒さんの目的、今やっている課題曲に応じてトレーニングメニューを変えたり吟味したりしています。当然、ノンビブラートで行わなければならない発声練習と、ビブラートを使ってもよい発声練習とに分けています。
実は発声練習にも感情は入るんですね。それをコントロールしないとならない。という考え方です。
いえ、そうとも言えないんです。それをこれからお話しますね。
次の譜面をご覧ください。
CmとCのコードです。まず、3度の音はピッチがずれないように、しっかり発声できるようにしておきましょう。というのも、この3度の音は明らかにコード全体の特徴を担っているからです。メジャーとマイナーの決定的な違いは3度の音が半音下がるのか(マイナー)、そうでないのかでしたね。
これをコード弾きします。発声する生徒さんは、これらふたつのコードを聴きながら3小節目のように発声します。メジャーなのか、マイナーかのか?のコード色を決定する3度の音は抜いて発声します。つまり、1-5-8-5-1(ド-ソ-ド-ソ-ド)を発声するのです。
するとどうなるか?同じ音を発声しているのに明らかに違うのです。それは
声のピッチから声量、そして音色に至るまで様々な観察ができるんです。
- マイナーの方が重い声色
- マイナーのトップノートが裏声になるのに、メジャーだと地声で発声
- マイナーだとトップノートで出した声の高さが♭(フラット)する
- メジャーだとトップノートで喉を詰めた発声になる
- その他
そう。このような状態の時には、明らかにコードの醸し出すムード(mood)に流されている。発声練習の時に出てくる感情というのは、紛れもなくムードの方です。この練習は中級者も声がブレ易いので気をつけましょう。
実は、歌を感性だけで歌っている。そんな人にもいえることです。僕は、この練習をレッスンで使っています。10人中9人の割合で、マイナーでの発声は変わります。
コード→スケール→コード→
と繰り返し発声します。こうすることで、
コードで把握→スケールでズレを修正→コードで再チャレンジ→
と、生徒さんの耳を慣らしていくわけです。
まとめ 自分で確認してみよう
今回の内容をまとめると、次の表のようになります。表のどこに当てはまるのかを常にイメージしながら、考えながら、感じながら発声練習やボーカル力の底上げに役立ててくださいね。
発声 | 歌 | ||
エモーション(情緒) | アソシエイト気味 | ||
ムード(気持ち) | ディソシエイト気味 | ||
フィーリング(情愛) | 振子のように行ったり来たり |
*表内の空欄につきましては、その時の状況状態で変わります。