以前の記事で、「レベルアップしたいボーカリストが必ずやっていること」を(その1)から(その3)に分けてお届けしました。
- 楽器に興味関心を持ってやり始めてみること(その1)
- 対照曲に目を向けていること(その2)
- 歌う行為の背景にあるものを理解し、自分の声を聴いたり、課題曲(オリジナルでも既成曲でも)の歌詞を書いたり4技能を駆使している(その3)
今回は、「レベルアップしたいボーカリストがこれからやるべきこと」といった内容をお伝えいたします。
これは、歌がうまくなりたい、上達したいといったボーカリストやカラオケ愛好家だけに留まらず、声優、ナレーターや話し言葉のコースを受講しているあなたにとっても確実に必要なことなのです。
これは一部の生徒さんは、確実にやっていることですし、レッスンでも勧めています。
一体それは何なのか?見ていくことにしましょう。
あなたの声を「観る」ことが「伸びる」秘訣♪
今回の内容を一言で言い表すと上のサブタイトルのようになります。
声を「観る」ことが「伸びる」秘訣って何ですか?
はい。あなた自身の声を「可視化」するのです。
声の「可視化」・・・?
そうです。自分自身の声を聴くことはどこのスクールでも勧めていることですね。さらに、あなたの声を耳で聴きながら目でも確認できると、客観的にモニターできます。
メタ認知能力ですか。
そうですね。こうすることで、自分の声を聴くのがイヤだなぁ、と言っている生徒さんでもキチンと聴いて(観て)くれます(笑)
あなたの声を「観て」みよう
自分自身の声を「聴く」のがイヤでも「観る」のは興味が持てる。そんな人が多いんです。
可視化できる手っ取り早いのは、スマホでのレコーディングですね。
いろんなアプリが出ています。簡単にレコーディングをして編集するのなら、スマホのアプリでも高性能なものがたくさんありますが、サウンドスペクトラムやピッチ曲線等が設定できるのが良いでしょう。スマホレベルでも、Sonic Tools SVM 等、素晴らしいアプリがたくさん出ています。僕はどちらかというとやはりPCで使えるアプリが良いと判断します。
▶音声解析アプリ PC の検索
音声ソフト(音声アプリ、音声解析、音声分析とも)は無料のアプリもたくさん出ていますので、じっくりと比較検討してみましょう。
難しそうだなぁ。
まぁまぁ。そう言わず、まずは良さそうなアプリを2つから3つダウンロードして、使いながら比較してみましょう。その中には、きっとあなた馴染んだアプリがあることでしょう。
いろんな分析のできるアプリを選ぼう
今回ご紹介するアプリは、次の本で紹介されているアプリです。
【竹内京子・木村琢也共著/若松奈央子イラスト『たのしい音声学』くろしお出版】
第7章 音を目で見てみよう P87~P100
使用アプリ●WaveSurfer (購入者に対してのサポートサイトあり)
これは波形だけではなく、サウンドスペクトラムやピッチ曲線、全体の表示など画面構成をカスタマイズしたテンプレートが作れることです。
これは音響音声学の中の音響分析入門の分野になりますが、とっつき易いところから入っていきましょう。アプリの使い方に関しては、出来るところから少しずつ覚えていけばよい話ですから(^^♪
人によっては
つまらない。
と感じている音声学です。初心者でも分かりやすい読みやすい本になっています。慣れてくると面白くなりますよ。音声学の「キホンのキ」についてはこちらです↓
WaveSurfer 設定画面
さあ、下の写真を見ながらひとつずつご説明しましょう。
波形:マイクから入った声を波のような形で表しています。声も含めて音は波ですからね。
縦軸では周期で振幅を表します。
横軸にタイムラインを表しています。
サウンドスペクトラム:音声を目で見えるようにした稿模様を表した段です。母音のフォルマント周波数を調べることができます。
縦軸では周波数
横軸にある濃く棒状の波形はフォルマントを表しています。
【振幅】
音の大きさ、音圧を表しています。波形では縦の長さとして表していますが、アプリの拡大をしていくと、細かく複雑な波の繰り返しが目で確認できます。【周波数】
同じパターンの山と谷が繰り返されている波形[周期波:単位はs(秒)]が、1秒間に繰り返される数のことです。
低周波:大まかな周期波で低音
高周波:細かな周期波で高音【Hz(ヘルツ)】
周波数の単位。波の山の頂点から谷の底までを1周期として、1秒間に何回繰り返されているかをHzという単位で表しています。
f0 = 1/t0 (f0:基本周波数/t0:周期)
【フォルマント】
フォルマントの位置(棒状の波形の濃さ)は、それぞれの母音で違っています。
ピッチ曲線:音の高さの曲線です。ここでピッチに関連していることの復習をしておきましょう。
【ピッチ、インターバル、チューニング➡音程】
✔ピッチ(pitch)
音の高さ(高低) の調子のこと。音程が悪いという言い方は、ピッチが悪いということ。
別の意味では、基音そのもののことをピッチともいう。✔インターバル(interval)
音の高さと低さの間隔( 隔たり) のこと。✔チューニング(tuning)
音の高さや電子信号などの調律が取れている状態(一致している状態)を意味する英語。 通信や放送において、調律が取れている状態。 同調。 周波数が合っている状態。
時間:タイムラインのことです。全ての列の横軸は時間=タイムラインです。レコーディングすると左から右に波形が流れていきます。
全体表示:小さくてわかりにくいですが、波形の全体を表示しています。
声を聞くのは嫌だ!では、観ながら聴くのは?
レッスンで使ってみると、生徒さん全員が興味を示してくれます。
自分の声を聴くのも嫌だ!
こう言っていた生徒さんが、とても興味を持ってくれています。
歌声や話声、読んでいる声を観ながら聴く、あるいは聴きながら観ることで声の可視化ができます。あなたの五感をフル動員させながら、あなたの声を聴いたり、観たり、感じたり、味わったりしましょう。
それが、レベルアップしたい生徒さんがこれからやるべきことなのです。