今回は「自主練、自己練の地味な部分を楽しさに変えるために(第9回目)」として、自主練、自己練をやっていく中でボイストレーニングとボーカルトレーニングとの関係です。
皆さんの中には
発声練習と歌と直接に結び付くのか?
歌とは直接結びつかなくても、基礎練って大事なんじゃないかしら?
このように悩んでいる人も多いでしょう。今回、改めてここに切り口を入れていきましょう。ひとつの参考になれば幸いです。
実践の中でボイトレのメニューは役立たないの?
Twitterのフォロワーさんがこんな内容のことをツイートしていました。
歌が上手くなるコツありますか!?って聞かれる。
けど、そんなのは無いです。と答えています。
【内容の要旨は変えずに掲載しました】
僕も同感です。何故ならこのように訊いてくる人の多くは、自分自身のインプットとアウトプットのタイプが分かっていないことが多いからです。
よく、
ボイトレを習ってある期間経ったら、歌が上手くなる。
と、素敵な勘違いをされている人もいるようです。
実はですね、ボイストレーニングという意味範囲を
- ボトムアップとして捉えているのか?
- トップダウンとしてとらえているのか?
- ボイストレーニング≒ボーカルトレーニングとしてとらえているか?
によって変わってくるのです。これが今回の結論です!
ボイストレーニングとボーカルトレーニング
今回はどちらかというとボイストレーニングよりも、ボーカルトレーニングにベクトルが向いた内容となっております。ボイストレーニングとボーカルトレーニングの違いは何なのでしょうか?
【ボイストレーニング】
歌うために基本となる項目を行なう。基礎を積み上げるボトムアップ型とトップダウン型があります。▼こちらをご覧ください。
ボイストレーニングの基本項目-総括ボイストレーニングで「やること」8つのアプローチ♪ ボイストレーニングは、腹式呼吸と発声だけやればよいのでしょうか。スクールや教室によって明確にしている所とそうでない所があります。また、独自のメソッドややり方を打ち出している所もあります。 マトリクスを描いてシンプルにしていくと、ボイストレーニングで...【ボーカルトレーニング】
どちらかというと歌うことが中心のレッスン。ビブラートやフォールダウンなどのボーカルテクニックを習得。曲の中で歌いながらボイストレーニングにフィードバックすることもあります。
ボーカルトレーニングについてはこちらにも出ています。
課題曲を選んでから歌うまでの準備方法
課題曲の個人練習のやり方は、以前こちらの記事にも挙げておきましたので、こちらも参考にしてください。
ボイストレーニングにはふたつの型がある
ボイストレーニングと言ったら、すべての土台となるもの。
あなたはそのように考えていないでしょうか?
もちろんそれはそれで当たっています。しかし、それに縛られ過ぎてもいけないのです。
ボイトレのことを考えながら歌うと歌えなくなるのは、ボトムアップでしか考えられていないからです。
【宮本武蔵の名言】
平常の身体のこなし方を戦いのときの身のこなし方とし、
戦いのときの身のこなし方を平常と同じ身のこなし方とすること。
究極、歌うこともこの教えに近い!!と言い切ってしまうと根性論、精神論になってしまいますが、ある意味間違いではないとも言えます。
ボーカルの立場で言うならば、ボイトレのことを考えなくても歌えるような、ボイトレと歌を繋いでくれるボイトレ(と呼ぶかどうかはさておき)があっても良いのではないでしょうか?実はあるんですよ!
ある課題曲を歌う!そのためのボイストレーニングもあるのです。その課題曲となっている歌のレベルを上げるためのボイストレーニングです。
例えば、髭ダンの曲とKing Gnuの曲では当然その曲に対しての練習方法は違ってきます。そのため、ボイストレーニングも異なるメニューとなるのです。また、あいみょんでも「マリーゴールド」と「愛を伝えたいだとか」では、リズムのとらえ方から違いますからね。
このようなボイストレーニングを僕はトップダウン型のトレーニングと呼んでいます。
ワンバイブス「パフォーマンス活声課®」では、このようにボイストレーニングにもボトムアップ型とトップダウン型があると位置づけて、そのようなレッスンを行っています。
【トップダウンとボトムアップ】
元々は言語教育法の読解指導で使われている用語。
トップダウン:課題曲上達のためにボイストレーニングのメニューを組んでいく。歌い方そのものを上達させるボーカルトレーニングとは一線を引く。
ボトムアップ:基礎力を考えて、積み上げてゆく。いわゆる一般的に言われているボイストレーニング。フォーム、呼吸法、リズム、発声、音程、音域、発音などが入る。
ワンバイブスではふたつの柱として、声を伸ばすボイストレーニングと声を整えるボイストレーニングをメニューに組み込んでいる。
課題曲をどう選ぶか?
課題曲は、担当のトレーナーに選んでもらってもあなたが選んでもどちらでもよいでしょう。とは言うものの、初級~中級レベルの方はあなた自身で選んだほうが良いのです。何故なら次の事が分かってくるからです。
歌いたいか? | 歌えるか? | 歌い手の動機は? |
歌いたい | 歌える | もっとレベルを上げたい。 トレーナーに認めてもらいたい? |
歌いたい | 歌えない | 持ち曲のレパートリーを増やしたい。広げたい。 もっとレベルを上げたい。 自分のクセや課題を知りたい。 |
お勧めされた | ?(未知) | 持ち曲のレパートリーを増やしたい。広げたい。 |
歌いたくない | 歌える | 歌い飽きた。 歌うと過去を思い出すので思い出したくない。 |
以上のことを確認した上でトップダウン型のボイトレやボーカルトレーニングに入った方が、その後の伸び方は違うと思います。
まとめ:現状の課題によって使い分けることが大事
ボトムアップのボイトレ、トップダウンのボイトレ、そしてボーカルトレは、あなたが現状どんな課題を抱えているのかによって使い分けていきましょう。
例えば、中級の範囲にいる人がJ Popばかり歌っていたとしましょう。トレーナーに勧められて洋楽を歌う場合、以下のようになります。
- 現状は中級の範囲なので、ボトムアップ型のボイストレーニングを中心にメニューを組んでもらう。
- 洋楽を歌うのは初めてなので、課題曲に応じたトップダウン型のボイストレーニングにする。
洋楽上達のためのメニューを組んでもらい自主練に活かす。 - ボーカルトレーニングは一番歌に結び付きやすい。2.との関連性で個人で出来る自主練メニューを組んでゆく。注意点は歌い方のテクニックだけに終わらないようにする。
「上手さ」をいったん置いて、「あなたならではの声」で歌えた時に次の段階が見えてくるのではないでしょうか?良い声の基準って人それぞれなので・・・。
ボーカルトレーニング | 抑揚、表現 | フレージング(Vo.テクニックなど) |
ボイストレーニング | トップダウン型 | ボトムアップのメニューも取り入れながら 課題曲別にメニューを組む。 |
ボトムアップ型 |