もはや発声練習の定番メニューとなっているリップロール(リップトリルとも)です。さらにもう一つの定番となっているタングトリル(タングロールとも)はいかがでしょう?出来ますか?
タングトリルを上手に回すためには「ラ行」の発音がスムーズに出来ることと違いが分かることがカギになります。
タングトリルの出来ない人への助け舟
リップロールとタングトリルの目的は下記のとおりです。
【リップやタングの目的】
✅ 唇と表情筋(特に口輪筋)のはリップロール/ 舌を柔らかくするのはタングトリル
✅ 喉のウォーミングアップとクールダウン 場合によってはケア
(喉の筋肉の柔軟性と張力をつける/声帯の振動を自然に起こさせる)
✅ 音の高さに合った適切な息の量が吐ける
言い方を変えると、上のチェック項目がすべて出来ていれば、自然に回るのです。
タングトリルがスムーズに回らない人への対応として
RとLとラ行の発音を見直してみよう。
ということを提案したいのです。
同じアルファベットなのに違う発音が多いRとL
まず、最も知られているRの音は震え音[r]といわれている音です。舌の先を歯茎にちょっとつけて震わせることでその音を作ります。日本語での発音の場合、この音は「巻き舌」と呼ばれています。
次に英語のRの発音は[ɹ]という接近音です。舌先を軽く持ち上げますが上あごのどこにもくっつきません。その結果、発音した時に日本語のラ行とは違う音に聞こえます。
さらに、ドイツ語の場合は口蓋垂(のどちんこ)を震わせる[ʀ]や[ʁ]などの音になります。この音は日本語にはありません。
日本語のラ行
なおさらに、Lの発音も調音法(音を作る方法)がそれぞれの国によって異なります。
実は日本語のラ行の発音記号は[l]ではありません。ラ行は、有声歯茎弾き音といって[ɾ]という発音記号で書きます。なんだか[r]に似ていますが、日本語のラ行[ɾ](有声歯茎弾き音)は、[r](有声歯茎震え音)と発音の種類(調音法、調音様式)が違うのです。
英語のL[l]は舌先が歯茎について両方の隅から息が漏れ出ます。日本語のラ行[ɾ]の場合は舌先が歯茎についてスグに弾かれる音です。英語のL[l]の方が、ほんの少しだけ舌先が歯茎にくっつく時間が長くなります。
日本人は本当に英語のL(エル)ができないの?
結論から話しますと、自覚がないだけで無意識のうちにLの発音[l]が出来ている人もいるかもしれないのですよ。では、ラ行[ɾ](有声歯茎弾き音)とL[l](有声歯茎側面接近音)との違いはどこにあるのでしょうか?実は、単語や言い始めのアタマにラ行が来るか?語中で来るかの違いで発音が変わる場合があるのです。
こんなことをやってみましょう。まずゆっくりと
ソーラン節
と言ってみてください。
次に
ラーメン
をこれまたゆっくり言ってみましょう。比べてみると
「ソーラン節」の「ラ」は舌先がB側に向きやすい |
「ラーメン」の「ラ」は舌先がA側に向きやすい |
あなたの口の中で舌先がこのような動き方をしていませんか?つまり、舌先がB側に向いていた方がタングトリルがやり易いのです。
語のアタマに来る音か?語の中に来る音か?で発音が変わる
上の図から、
- 語頭でラ行を発する場合、舌先がA側に向きやすくなる。それが[l](有声歯茎側面接近音)
- 語中でラ行を発する場合、舌先がB側に向きやすくなる。それが[ɾ](有声歯茎弾き音)
と、まとめることが出来ます。
と、いうことは、語中のラ行を発音するタイミングで
ソーララララララン節
のように試してみると回り始めてくるでしょう。
話し言葉や歌う場合での使い方
最後にまとめに入りましょう。
実際に話し言葉で使う場合や、歌っている時に使う場合には、どんなことに注意をしたら良いのでしょうか?
ふたつの分野で見ていきましょう。
話し言葉の場合
まず話し言葉の場合、語のアタマ(語頭)に来るか?語の中(語中)に来るかで変わることは、先ほども書きました。
舌先はAでもBでもどちらも可
[ɾ](有声歯茎弾き音)でも[l](有声歯茎側面接近音)でも、どちらでも構わない。
語頭に来るラ行音
例)りす れんげ らっきょう 論述(ろんじゅつ)
因みにラ行で始まる単語は日本固有の語(和語)ではなく、漢語か外来語です。
語中:「ン(撥音・跳ねる音)」の後のラ行音
例)かんらんしゃ(観覧車) こんれー(婚礼) ガスコンロ
舌先はAの向きで発音する傾向
[ɾ](有声歯茎弾き音)よりも[l](有声歯茎側面接近音)の傾向がある。
語中:「チ/ツ/ッ(促音)」の後のラ行音
例)ちり(地理) しつらくえん(失楽園) つるかめ(鶴亀) タリアテッレ
舌先はBの向きで発音する傾向
それ以外の語中にくるラ行音は[ɾ](有声歯茎弾き音)で発音した方が良いようです。何故なら、[ɾ](有声歯茎弾き音)のように弾かないと甘えたような、昔のぶりっ子のような声になるからです。
ただし、アニメ声や両声類の声をやりたければ、声バリエーションになりますから、要は使い方次第ですね。
歌う場合
続いて歌う場合です。歌う場合は、もっと条件が複雑になります。
課題曲のジャンル、リズム(特にテンポの要素からくる音符の伸ばし方)、さらに低音中音ででてくるのか?サビの高音域で歌うのか?これらの条件を反映させながら[ɾ]にするか[l]にするのかを決めていかないとなりません。
J-Popでも外国曲でも歌詞をしっかりと自分で入力したり書いたりして、音の処理を学んでいきましょう。やっていく途中で、多くの気づきを得ながら歌うというアウトプットをする。そしてフィードバックを繰り返すことで体感していきましょう。