ボイトレ用語の基礎知識、発音の分野が続きます。特に今回は発音と音声と調音の違いについて深堀をしていく。そのように考えています。
▼ボイトレ用語の基礎知識(1回目)
▼ボイトレ用語の基礎知識(2回目)
▼ボイトレ用語の基礎知識(3回目)
▼ボイトレ用語の基礎知識(4回目)
音声と発音と調音
今回の内容を一言でまとめると下表のようになります。ご覧ください。
発声 | 呼気が 肺→気管→喉頭 をとおして声帯に働きかける振動の状態。 | |||
音 | 音声 | 言語音 | 発音 | 調音(言語学、言語教育分野) 調音(医学、生理学、言語障害の分野) |
非言語音 | ||||
非音声 | 反射音 | |||
物理音 |
音声:発声発音器官を使って伝達をするときの声
発音:音声を出すこと
調音:声道の変えて音を加工すること
構音:調音と同じ意味で医学、生理学、言語障害の分野で使われる
▼ボイトレ用語の基礎知識(6回目)
話し言葉の発音と調音
まずは話し言葉の発音と調音です。言語によって音の数が違うということが分かります。
何故なら、その言語特有な音の数がそれぞれの言語によって違うからです。母音の数が各言語によって違うということはお分かりの人もいるでしょう。
例えばイタリア語、スペイン語、日本語は5つの母音だといわれています。しかし、これはよく使われている母音の数を表しているに過ぎません。
特に日本語の中でも、地域によって母音の数が違うことはこちらの記事にも出ています。
ミニマル・ペア
ところで、同じ役割を持つ単音どうしは、音素と呼ばれる分類になります。音韻論ではミニマル・ペアのことを習います。
【ミニマル・ペア】
1箇所だけの音素の違いが意味の違いを意味の違いを起こしている。このような語の組み合わせ。
例)尼/ama/さんの腕にアザ/aza/ができた。
音の違いが意味の違いを引き起こすかどうか?
さらに、異音といって同じ音素でも、実際にはいろんな発音の仕方で発音される音があります。
例えば、
と言っても
と言っても、まあ、変だぞと感じつつも、高田馬場(東京都内にある地名)として捉えます。
音の違いが意味の違いを引き起こす例
ところが、花瓶を英語で
と言うところを
と言ってしまうと、音の違いが意味の違いを引き起こしてしまいます。
このように各言語によって異音は違います。
国や地域によって異なる
表記では同じ文字でも国によって調音点が違うのです
別の例を示しましょう。
例えば、子音の[t]の発音は、英語、スペイン語、イタリア語では口蓋に触れるまで舌を持ち上げるという点では同じですが、それぞれの言語でどこに触れるのか?舌の先をどの位の割合で使うのか?などです。また舌先が触れている時間についても少しずつ違います。
【引用】アレクサンダーテクニーク
歌手ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと
同じ日本語で話すにしても、地域方言のことや個人差を考えると[t]の調音は違うと言わざるを得ません。
そう考えています。
今、たまたま例として出している音が[t]ですが、他の音も同じような考え方が出来ると思います。
歌の場合の発音と調音
他方、歌う合の音の作り方はどうなんでしょう?
歌の世界での調音は、話しことばで見てきたよりも、大きな違いがでます。話しことば以上に音域があるのが歌だからです。
音楽のジャンルによって調音は変わる
さて、日本語で歌うにしても、子音、母音は、音楽のジャンルによって、地域によって、人によって調音は微妙に変わります。
という歌詞で歌っていたとしても
- J-Popで歌う歌い方
- ロック調で歌う歌い方(清志郎風?)
- 演歌での歌い方
- 童謡を歌う場合
必ずそれぞれが違うはずです。もちろん、楽曲のメロディに依存する部分も大きいかなと思います。
例えば、ロック調の場合は、子音のアタック感を強めて歌う。演歌での歌い方の場合、鼻音のところで隠された「ん」を隠し味として出す。
といった方法で違いを出します。
伝えたいことが伝わるか
何よりも大切なのは、ボーカリストの個性や個声(こせい)によって加工された歌声が言葉になって聴き手に伝わるということです。
要するに、言霊(ことだま)といえば簡単に聞こえてしまうくらい、ダイナミックさとデリケートさを併せ持ちながら音を加工して出していくことが大切なのです。
発声、発音、調音はこういった事に関わってくるのです。
土台→呼吸器→発声器→調音、構音器
▼ステップ1. 土台となってくる必要なものごと
▼ステップ2. 呼吸器 身体作りから息の送り出しの段階
▼ステップ3. 発声器 息の送り出しから声が響くまでの段階
▼ステップ4. 調音、構音器 ステップ3.の段階で作られた音の加工
滑舌をよくするなど、ことばに変わる段階