前回の記事では、通る声を出せる人がよく気にすることはふたつ。それは、
- 理解と解釈の仕方
- 音、声、言葉
これらふたつの柱を考えていくことが大切だとお伝えしました。
中でも「理解と解釈」については、イメージの理解と「直ぐにできる」の意味。そして「音と声と言葉」については、「音としての声」と「言葉としての声」があることを学びました。
▼通る声を出せる人がよく気にすることとは?
今回は前回の続きになります。それは「音としての声」と「言葉としての声」をさらに深堀りしていく内容になっております。
声には音として、そして言葉としての「それ」がある
ここで、音声言語医学博士でもありボイストレーナーでもあった米山文明氏の言葉を引用いたします。
声は感性で勝負しことばは理性で勝負するといえるでしょう。声は相手のいろいろな感覚に訴えて効果を発揮し、ことばは相手に内容を説明して理解させる説得力を持っています。
【引用】米山文明著『美しい声で日本語を話す』平凡社新書377
*なお、本記事では、「ことば」を「言葉」と漢字表記しています。同じ意味ととらえてください。
音と声の関係
それでは順番に音としての声を、続きまして言葉としての声を説明しましょう。まず音としての声を語る前に、音そのものについてまとめましょう。
音の3要素
まずは声を考える前に音の要素を考えましょう。
音には3つの要素があります。それは、
- 音の大きさ
- 音の高さ
- 音色
に分けられます。
まず、音の大きさとは振幅(波の揺れ幅)によって決まります。大きな声は揺れ幅が広く、小さな声は揺れ幅が狭くなります。
次に、音の高さは周波数(1秒間の波の振動数)によって決まります。振動数が多いと周波数が高い。つまり高音になります。逆に振動数が少ないと周波数が低い。つまり低音になります。
そして、周波数が整数倍の関係になっている場合はサイン波の組み合わせによって下のようになります。
波形の周期を基本周期:t0
周波数:f0
f0=1/t0
さらに波の形が音色に影響します。言い換えれば形状が異なると音色も異なるという意味なのです。
声の4要素
そして次に声の要素です。声には4つの要素があります。すなわち、前述の音の3要素を声に置き換えたものです。
- 声の大きさ
- 声の高さ
- 声の音色(声色)
といった3要素に加えて、
- 声の持続力(長短、伸縮)
が加わり4要素となっています。
声の4つの要素に関しましては次の記事も参考にしてください。
大きな声より通る声
ところで、今はほとんど聞かれなくなりましたが、昔(昭和の頃)は
大きな声を出そう。
このように言われていました。一体、大きな声を出すという考えの根拠はどこにあるのでしょうか?
よく通る声とは大きな声を出すことではありません。
大きな声を出さなくても、整った身体から呼吸・発声・発音バランスよく発せられた声。僕はこれこそが通る声だと判断します。要するに響きのある声のことです。発している側はそんなに力を入れていなくても、聞き手にとっては大きく聞こえてくる声のことなのです。
通る声=響く声=共鳴する声=大きく聞こえる声
言葉と声の関係
言葉と声の関係を記す場合、次のことを知っておかないとなりません。それは
- アルバート・メラビアンの法則
- パラ言語情報
のふたつです。
アルバート・メラビアンの法則
聞き手にとって聞きたくない、怪しい否定的なメッセージを相手から発せられたときの人の受けとめ方についての割合です。人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかを判断するアルバート・メラビアンが行った実験なんですが、多くの俗流解釈があります。
一番使われているのは
- 見た目、視覚情報 55%
- 声のトーン 38%
- 話の内容、言語情報 7%
この中で38%を占める「声のトーン」が社会言語学の分野ではパラ言語情報であり、音声・話し言葉の分野ではプロソディ(韻律)であり、音楽の分野では声の4要素となるわけです。
なんだか用語が煩雑で分かりにくいですね。
パラ言語情報
さて、パラ言語に関しましては以下の記事でも載せてありますので是非参考にしてください。
さらにさらに、深堀していくと次のようなシチュエーションに出くわすのです。