前々回は、『もっと「自分の声」が好きになるトレーニング』として、ボイストレーニングと並行してメンタルトレーニング(以下、メントレ)の必要性をお伝えしました。そして前回では、メントレの目的とステップをお話ししました。
▼もっと自分の声を好きになるためのメンタルトレーニング(総論)
今回はメントレで柱となる部分、感情ということを考えてみましょう。
非言語と言語のバランス
感情について語る場合は非言語と言語のバランスが大切になります。
まず非言語とは、それ単独でもコミュニケーションの手段となる身振りや手振りなどを指します。それだけでなく、過去から現在まで起こっている出来事に意味づけをするサインとなるものでもあります。いうなれば、それは感情です。つまり振舞いは感情とリンクするわけです。いうなれば非言語は感情を伝えるのに大きな役割を果たすのです。
感情の種類
さて、今回話題にしている感情には種類があります。
【当サイトより引用】
(略)感情の意味範囲を次のように分けている分野がありましたので、僕も準じようと考えました。感情を考えたときに、僕にはこの考え方が一番しっくりくるからです。
●emotion(エモーション:情緒)は、比較的強く出て、急にドカンと変化する感情
●mood(ムード:気持ち)は、長時間持続する穏やかな感情
●feeling(フィーリング:情愛)は、同姓異性を問わず抱く感情
なお、これら感情については以下の記事リンクを貼っておきます。ぜひ参考にしてください。これらをもとに話を進めていきますね。
▼ボーカリストが感情について知っておきたいこと
▼人間力を高めてゆく声のアップデート術
共感と同感・同情について
さらに、感情を語る時、必ずそこに共感と同感についてのことも語られます。いわばこれは、相手から受け取る自分の感情についてのことです。ここでサクッと整理しておきましょう。
【共感と同情】
共感、エンパシー(empathy):まず共感とは、相手の立場に立って意思や感情を理解すること。相手が感じたり考えたりしたことを共に感じるという行為
同感・同情、シンパシー(sympathy):一方、同感・同情は、相手の感情に共鳴して湧き上がる感情の動きのこと。自然に相手の気持ちに対して同感・同情すること。
不安、緊張について
さて、人前で表現するときにも、情緒(エモーション)、気持ち(ムード)、情愛(フィーリング)を分けて考えると、興味深いことに気づきます。それはメントレを行なっていくにあたって避けては通れない感情のことなのです。
具体的には、「不安」「緊張」のふたつです。
不安について
まずは違いからです。
「不安」と「緊張」は、両方とも感情や心の状態を表す言葉ですが、微妙な違いがあります。
「不安」は、心が安定した状態ではないことを指します。つまり、将来の不確かさや心配事に対する感情を指すのです。自分自身や周囲の出来事に対して、何か悪いことが起こるかもしれないという心の状態を表します。不安は、心配や恐れといったネガティブな感情が含まれることがあります。
リスク管理
しかしながら、考えられる最悪の事態を想定しておけば、いざという時に備えられます。そうです。これはリスク管理なのです。
- 最高のイメージを描き
- 最悪の想定をして計画をし
- 最高の行動をする
不安な感情はリスク管理をするための素晴らしい道具なのです。
緊張について
次に緊張についてです。よくこんなことを考え、言ってくる人がいます。
緊張しているとなかなか良い声で歌えないので嫌です。
または
結婚式のスピーチで緊張してしまうと、上手く言えなくなるんだけど。
よく聞く言葉です。
つまり、緊張しているとなかなか良いパフォーマンスが出せないと言っているのです。なるほど、確かに緊張していると練習の時に出来ていることが出来なかったりしますね。
逆U字仮説
では、緊張しない方が良いのでしょうか?これをメントレで説明しているのが『逆U字仮説』と言われている考え方です。
要は緊張し過ぎてもしなさ過ぎても良くないのです。一番パフォーマンスが発揮できる状態はほどほどに緊張している時なのです。
逆U字仮説 について
さて、このほどほどに緊張している状態なんですが、人によって緊張の度合いと意味合いが違います。そうであれば緊張は全てダメというわけではなく、悪い緊張の状態から良い緊張の状態まで段階がある。このように考えるとよいでしょう。
とにかく逆U字仮説というのは、実力を発揮できるための適度な心理状態を作るために行います。それを最適化ゾーンといいますが、方法はふたつに分けられます。
【アクティベーションとリラクゼーション】
アクティベーション:弱すぎる緊張からある程度の良い緊張状態に自分を整えていくこと。
リラクゼーション:過剰な緊張状態から呼吸法や筋弛緩法を使って整えていくこと。
声とストレス
まとめです。声を使って表現する際には、常に言語と非言語のバランスを考えないとなりません。そこで自分の感情について向き合うことが大切だとされています。
その背景には相手や聞き手、聴衆との関係があること。また、不安、緊張については必ずしもマイナスで捉えないこと。これらがが大切になってきます。
(つづく)