先日の記事
歌で音程を外さないための心得とは?
で、滑舌音痴という言葉を聞いたことがない。
世の中、上手くできないことは何でもかんでも音痴ってつければイイってもんじゃないよ。
なんていう記事を書きましたね(笑)。
さぁ、今回は、あなたの滑舌を良くするために滑舌練習を助けてくれるマル秘ツールを紹介します。
以前(今でもそうですかね?)、滑舌が良くなるためのボイトレグッズが紹介されていました。僕は使ったことはありませんが、そのグッズ、評判は良かったと聞いています。
今回紹介するのは、お金を払って買うものではありません。ググれば必ず出てくるものです。
これは、使い方によってはあなたの強力な武器にもなり得ますよ。
さぁ、一体何でしょうか?
口腔断面図に慣れよう♪
それは、口腔断面図なんです!
ググるとこんな感じの画像がたくさん出てきます。
拍子抜けしちゃいましたか?
でもね、一見、暗号記号のような難解そうなこの図を読み取ることが出来れば、それを発声や発音練習に役立てられるので強いなあ、と考えるわけですよ。
音声に関わる人たちが避けては通れないこの断面図です。ボイストレーニングの世界でも、使えるトレーナーの方はまだまだ少ないようです。
トレーナーの皆さん、習っている生徒さん問わずこの図が読めれば、発音指導が間違えた方向にいかなくてよいわけです。
しかし、読み取るまでは時間がかかるし、コツをつかむまで大変だともいわれています。
何が難しくさせているかといえば、図の見方と発音記号の把握でしょう。
この断面図は、日本語教育や言語聴覚の分野には決まって出てくる図です。特に試験問題で問われることがありますね。身近な所では、英語などの外国語の勉強をするとき発音の分野でお目にかかる発音記号がそれです。
この口腔断面図、その分野で仕事をしている方でも大の苦手という方が多いようです。検定試験の影響が大きすぎるのでしょうか?(苦笑)
良い機会なので、いったんここで整理、読み取り方の基礎を伝授しておきましょう。
ボイストレーニングにIPAの表をとり入れよう
まずは、こちらのサイトを参考にしてください。
アイキャッチ画像はIPAの子音(肺気流)を示しています。
IPAのサイトに飛んでいただくと、他にも図を見つけることが出来ます。
左から
- HOME
- 音声器官
- 母音
- 子音(肺気流)
- 子音(非肺気流)
- その他の記号
- 参考文献
とメニューがありますので、見たいところをクリックしてください。
IPAで口腔断面図を確認したい場合は、音声器官をクリックしてください。
ここで簡単に音声についてまとめておきましょう。
音 声 | 吐く息の妨げが | 音を決める要素は | 声帯振動が |
☑ある=子音 |
☑調音点 ☑調音法(調音様式) |
☑ない=無声音 | |
☑ある=有声音 | |||
☑ない=母音 | ☑舌の位置(高さ、前後)
☑唇の丸め=円唇・非円唇 |
表が読めたら出来る5つのこと
口腔断面図を読めた方が、あなたの間違えた発音をチェック、そして正しい発音へと変えることが出来るのでお得です。
☑自己流だった発音に対して音のルール、法則を知ることが出来る。
☑母音や子音の音を決める要素と、発音の方法が分かる。
☑母音を決めるための要素を確かめながら発音出来る。
☑子音の調音点と調音法(調音様式とも)をチェックしながら修正可能。
☑図を読み取れることで得られるトレーナーとの共通の認識。
など、メリットはたくさんあります。
▼母音の復習についてはこちらから
▼子音、特に調音法(調音様式)と調音点については、こちら
IPAの表 読み取り方 3つのキモ
口腔断面図を解読するためには、次の3つのことに注意しなければなりません。
大体口の中のことなんて日頃は意識していないので、直ぐに把握できないかもしれません。とりあえず21日間(3週間)断面図とにらめっこしてみてください。
まず、言えることは、左側を鼻と口、右側を喉、奥側として描いていることです。もし、逆で描いている図を見た場合、ミラーで反転されているか間違っている図だと判断してください。
何故か?
それは、IPAの母音、子音(肺気流)の図表をみると分かります。
どちらの図も左側が口の前側、唇側で右側が喉側、奥側になる。それらの表と図とを合わせているからです。
子音(肺気流)表の場合、表が2段に分かれていて下の表が上の表よりも口の奥を示しています。
この頁の一番上にあるアイキャッチの図では、ひとつの表にまとめられてあります。音声関連の本でも、ひとつの表にまとめられていることが殆どです。
それでは、3つのキモを順番に見ていくことにしましょう。
その1.鼻にかかるかどうか
上の図をご覧ください。①の部分では、口蓋垂と咽頭壁の間の口蓋帆が開いています。この部分が開いているかどうかで音が決まります。簡単にいうと鼻から息が抜けるかどうかです。
この部分が開いていると鼻音となります。鼻から息が抜ける音、つまり鼻にかかる音です。この部分が閉じていると鼻音以外の調音法になるわけです。
左側の図では唇が閉じられたマ行の鼻音[m]になります。
右側の図では舌と上の歯の歯茎がくっついてナ行の鼻音[n]になります。
ただし、フランス語でよく使う鼻母音の場合には、鼻からも口からも同時に息が流れ、鼻に抜けた母音ともいわれます。母音は、息の流れを妨げる子音とは違い、吐く息の流れに妨げは起こりません。
【鼻母音 (Nasal vowel)】
母音を鼻音化したものを特に鼻母音(びぼいん)と呼びます。母音を発しながら、息を部分的に鼻に抜いて発音します。口からも鼻からも両方に息を流す音です。鼻音とは違い、口の中で閉鎖が作られません。
その2.鼻にかからない+舌や唇が閉じているか
先ほどは、①の部分で口蓋帆が開いていましたが今度は閉じてくっついています。分かりますか?
さらに②の部分をご覧ください。
左側の図では唇も閉じています。このような図だと破裂音(炸裂音)[p][b]になります。
右側の図では舌が上の歯茎の裏についていますね。
このような図だと、破裂音(炸裂音とも)[t][d]、または破擦音[ts][dz]にもなります。
その他、断面図によっては日本語のラ行の弾き音[ɾ]などの調音法も判断できます。
また、上の図ではないんですが、くっついていても摩擦音になる場合もあります。
その3.鼻にかからない+舌や唇が狭くなっているか
今度は、①と③の部分に着目しましょう。
上の2.鼻にかからない+舌や唇が閉じているか、では②が閉じられたりくっついていました。今回は、少し狭い隙間があります。この隙間のある調音法を摩擦音といいます。
左側の図では、[ɸ](日本語で言うところのフやファの子音)、[ß]という子音になります。
[ß]の音なんですが、「カバン(鞄)」のバは、人によっては[ß]という摩擦音で発音する人もいますね。
今回は紹介しませんが、断面図によっては震え音、接近音などの調音法も判断できます。
詳しくは、IPAの子音表で確認(アイキャッチ画像も参照)してください。
断面図で判断できないこともある
万能なような口腔断面図でも判断できない、図だけでは示せない要素もあるんです。
それは、
声帯振動のあるなしは図では示せないということです。
声帯振動のあるのは有声音、声帯振動のない音は無声音です。これだけはどうにもならないのですw
子音表の無声音(左側)と有声音(右側)で判断してください。
まとめ:聴き分けが出来れば言いワケも出来る
口腔断面図を読み取るためのポイントを整理しておきましょう。
鼻にかかるか (鼻腔への通路) |
調音法 | 調音点 | |
① | 開いている | 鼻音 | 閉じている くっついている |
①と② | 閉じている | 破裂音(炸裂音) 破擦音 |
|
①と③ | 摩擦音 | 狭まっている |
他の調音法もありますが、まずは3つの息の妨げられ方を理解してください。調音法としては鼻音、破裂音、破擦音、摩擦音になりますが、始めはこの分け方からです。
慣れるまでには時間がかかります。
日本語教育能力検定試験などで断面図が苦手だという受験生の方もたくさんいらっしゃるからです。
でも慣れてしまえばこちらのモノ!
特に発音と絡めた分野が苦手な方は、習得することで、滑舌が良くなるマル秘ツールとしてあなたの右腕になること間違いありません。
レッスンでは、担当トレーナーと相談の上、インプットとアウトプットをバランスよく行いましょう。聴き分けが出来れば言いワケも出来ます!
発音に関しては聴き分けの良い人で在ってくださいね。そうすると、とことん言いワケができてきますから。
あ、ひとつ注意です。言いワケは、「言い分け」であって「言い訳」ではありませんので。