今年(2017年2月)に入ってから、一般社団法人日本音楽著作権協会 JASRAC(ジャスラック)[以下、JASRACとします]が音楽教室からレッスンに使った曲の著作権使用料をとるといった方針を打ち出しました。
音楽教室側は、直ぐに反論。教室側から著作権使用料をとるのは不当だという事で、先日(2017年09月現在)、裁判が始まったことはご存知だと思います。
ただ、皆さんの中には
正直このように考えている人もいらっしゃるかと思います。
今回は、著作権を巡って、僕ら音楽教室、ボイトレ教室側とJASRACの主張の要旨、それに対してどう対処するのか?を書いていきます。
イマイチよく分からない
といって、逃げ腰だった分かり難い著作権のことをこの機会に向き合ってみませんか?
著作権とJASRAC♪
著作権は知的財産権の中のひとつです。どういう権利なのかはこちらにも書いてあります。参考にしてください。
ここで、著作権に関しての全体図を載せます。
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このツリー構造が、著作権を複雑にしている原因なんですが、まず
- 著作物を生み出した人の権利
- 著作物を伝える人の権利
と大きく2つの柱に分ける。
次に著作物を生み出した人の権利には、著作者人格権と著作財産権があるということ。
著作物を伝える人の権利(著作隣接権=財産権)には、実演家の場合、レコード製作者の場合、放送、有線放送事業者の場合と立場によって人格権と隣接権があるということを何となく入れておくと全体像を把握できます。
著作権の発生
現代の著作権法に一番影響を与えた最初の著作権法は、1710年に英国において制定されたアン法という法律です。
ただ、元々の著作権の歴史は1545年のヴェネツィアからです。
結局、羅針盤・火薬・活版印刷術といったルネサンスの三大発明の中で著作権は生まれてきたのです。
特に活版印刷術は、宗教改革に大きな役割を果たすことになります。聖書が写筆ではなく、活版印刷術によって大量生産されたからです。ルターのドイツ語に訳した聖書を大量印刷でき、著作権を考えていったのでした。
JASRACについて
次にJASRAC(Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers)です。
1939(昭和14)年11月18日に設立。日本の著作権等管理事業法を設立根拠法に、音楽著作権の集中管理事業を日本国内において営む一般社団法人です。
楽曲の音源(著作物)を利用した場合、著作権の効力が及ぶ利用には次の形態があります。
✅喫茶店・レストラン
✅ダンス教室(1971年より社交ダンス教室、2015年より全てのダンス教室)
✅カラオケ(1987年より、1997年からは通信カラオケにも拡大)
✅フィットネスクラブ(2011年より)
✅カルチャーセンター(2012年より)
✅歌謡教室(2016年より)
✅音楽教室(2018年より予定)
✅コンサート、ライブ会場における不特定または特定多数向けの音楽の演奏
✅CD・DVD・映画・オルゴール等の記録物などへの音楽の複製
✅テレビやラジオによる音楽の放送
✅インターネットによる音楽配信など
音楽の許諾をとらないで利用する著作権侵害の監視も業務となっています。許諾を得ずに音楽の利用を見つけた場合、利用許諾契約の締結を求めると同時に過去の利用分を遡って使用料の請求を行っています。
このやり方をキタナイととるかどうかです。
また、プロミュージシャンで、ライブで自分のオリジナル曲を演奏、歌ったりしました。後日JASRACから
と請求がきた!
何でだ!?
なんていう話はよく耳にします。
本当に徴収するの?
ここで、裁判までの背景と経緯を引用します。
裁判の背景と争点は?
著作権法は、公衆に聞かせることを目的に、楽曲を演奏したり歌ったりするという「演奏権」について、作曲家や作詞家が専有すると定めている。
JASRACは2月、この演奏権を根拠に、音楽教室が「公の演奏」に当たるとして使用料を求める方針を表明。2018年1月から徴収を始める予定だ。
これに反対した音楽教室の事業者が、「音楽教育を守る会」を結成。「音楽教室での練習や指導のための演奏は演奏権に該当しない」と訴え、裁判に発展した。
主な争点は、演奏権の規定が音楽教室に及ぶかどうか。
【引用】HUFFPOST NEWS 音楽教室は「公の演奏」に当たるの? JASRACと音楽団体、著作権料めぐって裁判
「聴かせることが目的」v.s「技術を学ばせるため」より
まずは大手から
もし、著作権料徴収となった場合、はじめは大手楽器メーカーが運営する教室のみを対象とし、様子を見たうえで、と言っています。
いずれ小さな教室にも魔の手・・・あ、イヤ、徴収の通達がくるかもしれない。スクールや教室存続にも関わることになってきます。
なぜ、はじめは大手事業者だけが対象なのでしょうか?
これには3つの理由からそうしたいと言っています。
- 営利性
- 事業規模の大きさ
- JASRAC管理下にある著作物の使用量の多さ
要するに、先ずは資本力のあるスクールから吸い取れ!という方針です。
個人事業としてやっている教室の場合、今後どうなるのか。
これが、著作権法第1条で言っている
もって文化の発展に寄与(=音楽文化の普及)する事を目的とする
に繋がるのかどうか?僕はオカシイぞと首をひねります。
さて、このような状況の中で音楽教育を守る会という団体が発足。
- 一般財団法人ヤマハ音楽振興会
- 株式会社河合楽器製作所
- 株式会社開進堂楽器
- 島村楽器株式会社
- 一般社団法人全日本ピアノ指導者協会
- 株式会社宮地商会
- 株式会社山野楽器
殆ど楽器メーカーが名前を連ねています。大手ばかりです。
▼こちら
音楽教育を守る会
音楽教室側とJASRACの主張 まとめ
いろいろと言い合っていますが、まとめると次のようになります。
教育のための演奏は、使用料が必要となる公衆への演奏ではない。
というように主張が真っ向から対立しています。
宇多田ヒカルさんは神様?
この話が出た今年の2月(2017年)、宇多田さんがこんなことをツィートして大きな話題になりましたよね。
この発言は宇多田さんだから、アーティストとしての実績を積み上げてきた方だからこそ言えることなんでしょうか?
特にシンガー・ソング・ライターの(ご自身で作詞作曲演奏歌をやっている)方、どのように考えていますか?
制作系の生徒さんに尋ねてみました。
気持ち、よ~く分かります。
オリジナル曲と言いつつ、先人の創作したものをリスペクトしつつ、
スワイプして、
パクッて、
ちょっと拝借して、
参考にしているのは間違いのない事実です。
そうするとどこかしら曲の進行も似てきます。これは仕方のないこと。
なので、今後音楽教室側として目指すのはどこなのかは何とも言えません。作詞作曲制作系のコースか?
先ほど「著作権は侵害されやすく」と出てきました。(音楽教室側とJASRACの主張 まとめの項目)
これは、著作権は無方式主義なので侵害されやすくと付け加えた方が良いでしょう。
特許(発明や技術的アイディア)や商標(識別するための商品やサービス)、意匠(物品のデザイン)などの産業財産権の場合、特許庁に出願、登録をして許可を得れば、絶対的な独占権になるのです。
ただし、独り占めする代わりに料金を払わないとならないですがwww
著作権法では侵害については、
- 原著作物に依拠(拠りどころで元の著作物を参考にした)
- 原著作物と実質的に同一または類似であること(同じか似てしまった)
- 法律上禁止された行為を行う場合(海賊版を利用するなど)
とされています。
と、言い張りますか?(笑)