ワンバイブスでは、ボイストレーニングを軸に音楽の分野(歌う分野、制作・製作の分野)、そして発話(話す・読む)の分野に分けてコース設定をしています。
音楽(歌う) | ボイストレーニングコース | 阿佐ヶ谷教室 |
発話(話す・読む) | 伝える声力アップコース | 阿佐ヶ谷教室 |
歌う+読む | 頑張るママコース/親子遊びコース | 阿佐ヶ谷教室 |
歌う+話す・読む | アドバンスコース | あざみ野・生田教室 |
音楽制作・製作 | マルチシンガー養成コース/ 月額制音楽業界パノラマパック |
あざみ野・生田教室 |
ボイストレーニングを行うにあたって、音楽の分野(歌うこと)にしろ、発話・発語の分野(話す・読む)にしろ、知っておいた方が良い音の知識というものがあります。
どちらかというと、発話・発語(話す・読む)の分野との結びつきをイメージしやすいかもしれませんね。
英語などの外国語を習っているあなたなら、結びつきやすいかもしれませんね。
しかし、シンガーソングライターのあなたはもちろんのこと、ボーカリスト、音楽制作現場にとっても必要な知識だと考えていますので、概略だけでも押さえておきましょう。
音声学と音韻論♪
こう書くと、途端に、、、
と感じるあなたもいらっしゃるかもしれません。
でもね、こういった音声関係の内容は生徒さんの求めている物事によって、頭への入り方が変わってきますね。
音声学や音韻論は、人の発する音声を科学的に捉えています。言ってみれば理系の範囲にも文系の範囲にもなります。
例えばこんな人に対して・・・。
☑英語の歌を歌ってみようと決心した人
とは言うものの、敷居が高い。そんな時のために、ちょっとしたきっかけを掴みたいためにやってみる。
☑初めて作詞作曲をする人
先生と一緒に作ったメロディに言葉がうまくノラない。何だか説明文のようになってしまいます。そんな時、音節、そして音韻ということを知っていれば面白いように言葉がハマっていきます。
☑滑舌が悪いので良くしたいと考えている人
以前、「ボイストレーニングでイメージする6つの事とは?」で、話す・読むボイトレ(発話発語系)の場合、アンケート結果の約1/3が発音・滑舌を占めているといったことをとり上げました。
発音の仕方(調音)を考えることは、それ自体、後で出てくる調音音声学を学んで実践しているということになります。
音楽どっぷりのあなたでも、音楽からの切り口とはちょっと違ったアプローチで行ないますので、興味を持って貰えるとありがたいです。
音楽どっぷりのあなただからこそ学んでもらいたい分野なのです。特に制作・製作系の方。レコーディングディレクションに音声学や音韻論の知識があるだけで知力、知恵になりますよ。
音声ってなぁに?
そもそも、音声とは何でしょうか?
音声学の前に、音声そのものについてお話ししましょう。
ここで、これまでのまとめです。
音声とは、有意的な(意味のある)音を発することをいいます。
例えば、
✔人間の言語音
✔叫び声
✔独り言
✔歌
✔咳払いや舌打ち
✔スマホなどの自然言語処理音
が音声に当てはまります。
【自然言語処理(natural language processing)】
人工知能と言語学の知識を利用して人間が日常的に使っている自然言語をコンピュータに処理させる一連の技術。
舌打ちが音声に入るのが意外でしたか?
舌打ちが音声に入るのは、吸着音(バキューム音)として使う言語があるからです。
アフリカのコイサンの諸言語やズールー語、͡コサ語という言語で使うらしいです。
ところが、九官鳥やオウム、場合によっては一部の哺乳類が、
なんて発するのは音声といわないのです。ビックリでしたか?
自身で判断して音を出して(鳴いて?)いるわけではなく、人の音声を真似ているだけだからです。
動物の鳴き声も音声に入りません。
人間の聞こえる可聴域を全て把握するイルカの鳴き声でさえ、音声とはいいません。
音声学3つの分野
言語音を中心とした有意的な音(音声)を研究をする分野が音声学です。
この音声学には大きく3つの分野があります。
アイキャッチの図をここでもう一度出しましょう。
音声の伝達は、
- 表現する人がどのように音声を作っていくのか。音の作られ方を観察する。
- 口から出て相手に伝わる音波の物理的な性質を機器を使って解析する。
- 音波と知覚、特に聴覚や脳との関係を調べる。
の3つに大きく分けられます。
1を調音音声学 2を音響音声学 3を聴覚音声学 といいます。
1.調音音声学(articulatory phonetics)
調音音声学は、人間がどのように言語音を発しているのかを扱う分野です。
口の中で、どのように発音しているのかを観察します。
いわゆるボイストレーニングの発声、発音、滑舌の項目にあたります。
特に音楽の分野では、ボーカリストだけではなく、吹きモノ奏者、例えば、フルート、トランペット、サックス、ハーモニカを演奏しているあなたは、舌の使い方をどうするかなど、知って得することが数多くありますよ。
また言葉=言語が材料となっていますので、アナウンス、ナレーション、朗読、プレゼンなど音楽以外の分野でもこれらの知識を生かしてゆくとよいでしょう。
母音、子音といった、少なくとも英語をやったことのある人にとってはおなじみの用語から、調音点、調音法、声帯振動の有無(有声無声)、IPAまで。
さらに同じ内容でも日本語教育や放送の世界では調音、言語聴覚や医学の世界では構音と呼ばれているのも厄介です。
一見難しそうですが、*言語聴覚士の国家試験、**日本語教育能力検定試験にでてくる音声音韻、***声優検定(声検)などにでてくる滑舌の基礎知識としても役立つ分野です。
**▼日本語教育能力検定試験〈公益財団法人 日本国際教育支援協会〉
2.音響音声学(acoustic phonetics)
ミュージシャンの中でも、制作・製作系の仕事をしている方などは、とっつきやすい音声学の分野かなあと判断します。
何故かというと、波形慣れしているからです。
別の言い方をすると、作曲やアレンジ、レコーディングやミックスの作業をやっている方は、音を目で見たり観察することが出来ているからです。
DAWソフトの画面でリージョンや波形は見慣れていますからね。
また、ライブの音響スタッフやPAエンジニアの方などもこの分野を学んでゆくと良い発見があるかもしれません。
音響音声学とは、サウンドスペクトログラム(音声を目に見えるようにした波形)などを使って、空気中に伝わる音声の仕組みを探っていきます。
空気中で音が伝わる時、縦波を作ることはあなたもご存知かと思います。
この音波の特徴がどうなっているか?機器を使って客観的に分析していきます。
17年位前は、専用のソフトもかなり高かったのですが、今では、無料で音声解析のソフトがダウンロードできる時代です。
ワンバイブスでは、レッスンで生徒さんに発声時の声や歌声をスマホで録ることをススメています。
僕が生徒さんから許諾を得て、レッスンで録って、一緒に聴くこともあります。
使っているアプリで出てくる波形をチェックすること自体、もう、音響音声学の世界に足を踏み入れていることになるんですよ。(笑)
自分の声を客観的に聴くことは大切です。それは、次の聴覚音声学にも繋がるからです。
3.聴覚音声学(auditory phonetics)
聴覚音声学は、音声をどうやって聞くのか?あるいは聴くのかを扱う音声学の分野です。
ここではまず、聞き取りや聴き取りのメカニズムを知らなければなりません。
もともと音声を聞くこと、聴覚器官については、体感や自覚がしにくいといった点があげられます。
それが理由かどうかは分かりませんが、聴覚音声学は、音声学3分野の中で研究が遅れている分野だと言われています。
調音音声学で音を作る、滑舌を良くすることに関しては、ウェーファ・メソッドや割り箸を口に入れれば、舌の動き方を確認できます。
【ウェーファ・メソッド】 調音、構音位置づけ法。焼きお菓子のウェハウスよりも薄いおせんべいみたいなものを舌や上あごに張り付けて調音点、構音点(舌が上あごにあたる場所)を体感させる発音方法。
しかし、耳のこと、脳のことに関しては難しいという先入観もあって、なかなか理解しにくそうです。
なので簡単にいうと、
- 音の伝わり方(速さと振動、振動数、振幅や波形)、音の大きさと強さ
- 耳のメカニズム
- 耳の持っている音量調節機能:槌骨、砧骨、鐙(あぶみ)骨
- 耳から脳へ
- 脳の仕組みと役割
などを物理的、生理学的な面から覗いていく分野なのです。
音韻論
「言葉」を扱う言語学の中に音韻論という分野があります。
音声学との違いなんですが、
☑音声学=有意的な(意味のある)音を扱う
☑音韻論=意味の区別、識別、弁別を扱ったり、規則をまとめたりする分野
ということです。
音韻とは意味の区別を示す音声のことで、言語によって違います。
言語によって違う音韻の現象を法則にまとめることによって、色々な言語の特徴が理解できるのです。
この時いちばん大事なのが音素という音のグループです。その音が異なる場合、意味が変わってしまうのです。
例
球(たま)[tama]と釜(かま)[kama]
のように、どこかひとつの音が変われば意味が変わってしまうミニマル・ペア(最小対)が音素を決める要因になっています。
ところが、
秋刀魚(さんま)とサンタは音声としては異なります。
秋刀魚(さんま)[samma]
サンタ[santa]音素としては/N/で同じ音素という扱いになります。
はじめての方は難しいかもしれませんね。
でもこの音韻論、じっくりと学んでいくことで、歌のフレーズ処理の仕方や、作詞のテクニックまでも使えちゃうんです。
あと言語教育(日本語教育)や言語聴覚の現場でも使われています。
知っておいて絶対に損はないと判断。ゆっくりと理解していきましょうか。