衆議院の解散、総選挙戦がスタートしています。(2017年10月時点)
各候補者の演説する声を耳にする今日この頃です。
候補者の方々は、小雨の降る肌寒い中、頑張っていらっしゃいますが、正直、耳障りだなあと感じる時もあります。
今回は、政治家だけではなくニュースキャスター、社長、タレント等の話す声にフォーカスをあてて、スピーチ上手だなあと思う声が5タイプあるという内容で進めていきます。
なお、この5タイプは、僕の独断で選んだ方たちです。
当然、オバマ前大統領の演説は、とても上手です。
しかし、今回の対象として、日本語を使っている日本人の中で選んでみました。
声で伝える四天王+もう一人♪
今回は男性陣ばかりでした。女性の方に関しましてはもう少し観察させてください。いずれ声で伝える女性編もご紹介したいなあと考えています。
で、まずはこれまでの復習から(笑)
発話していることそのものの伝わり方についてはこちら
また、以下の記事も参考にしてください。
▼ボイストレーニングでどんな声を望みますか?
タイプ1.浸み込むようなソフトボイス 池上彰さん
声よりも説明のうまさの方に納得してしまうのがこの方なのではないでしょうか?
あらゆるところから「説明の神様」のように言われています。
僕が池上さんのことを初めて知ったのは、20年以上も前のこと。池上さんといえば、1994年から日曜日の朝にやっていた番組。NHK週刊こどもニュースを見てからでした。もともとは子供向けのニュースとして放送されていましたが、その分かりやすさ、共演の柴田理恵さん(お母さん役)とのコンビネーションの良さに魅かれて毎週見ていました。
*この番組に関しての賛否はあると思いますが、ここではそういった事ではなく、池上さんの声について述べていきます。
✔NHKアーカイブス みのがしなつかし「週刊こどもニュース」
池上さん若いっ!今とあまり変わらないお姿。
お姿だけではなく、声の艶も当時と今とそんなに変わっていません。音声が入る高さもあまり甲高くなく、音色もソフトです。
甲高くないように聞こえるのは、イントネーションの作り方が上手いんですね。
イントネーションのへの字のラインの幅が高音→低音ではなく、中高音→中音、中音→中低音と狭い音域でまとめられています。
プラス池上さん独特の声の音色です。この音色が浸み込むように入ってくるのではないか?と僕は考えています。
さすがに発話のテンポは、今より昔の方が速かったですね。でも早口というイメージはなく、スゥ~ッと浸み込むように入ってくるのは、音声の出だしと出口。次の文に移る時の間を考えながら行う発話は流石です。
タイプ2.リズミカルな甲高い声が販促ツール 高田明さん
あのリズミカルで高音域、早口なんだけれどスパッと入ってくる「伝わること」をウリとした高田明さんの声は、声そのものがUSP(Unique Selling Propositionの略)で、独自の営業・販促のツールとなっていました。
▼USPのことはこちらにも載せてあります。
高田さんは、2015年1月に大手通販会社ジャパネットホールディングス(本社は長崎県佐世保市)を引退しました。
ところが、あの引退会見時の時に発した声があまりにも低くて驚いた!と語り草になっていますね。
男性には珍しく声を使い分ける事が出来る人だと感じました。
元々声の使い分けは、男性よりも女性の方が上手だといわれています。
TPOによる使い分けは男女とも出来るんですが、特に本気で怒った時の女性の声は普段のTPOで分ける声よりも、全く違った声を発しているんです。(経験された男性もいるんではw)
オフィシャルからプライベート(夜の○○○も♪)まで、女性の方が声のコードスイッチングが上手です。
男性は怒ったときは、今ある声の要素をそのままハイライト(語気を強めたり高めたりさせる)させています。そういう人が殆どです。
▼「良い声」を知るために必要なこと
高田さんの場合、「伝えることから始めよう」という著書の中で伝わるコミュニケーションとして次のことを挙げておられます。
これらが、声を使い分ける原動力になっているのではないかと考えました。一部抜粋します。
第4章 伝わるコミュニケーション
☑スキルとパッション、そしてミッション
☑ミッション―感動を届ける
☑パッション―伝えることではなく、伝わること
☑売れ行きは「気力」で決まる
☑想いの強さ―伝わる原動力
☑分かりやすく伝える
☑面白く伝える など【目次引用】高田明著 伝えることから始めよう 東洋経済新報社
タイプ3.男性の中では高音域 林修先生
もはやタレントであり、一予備校の講師の域を脱していますよね。
「いつやるか? 今でしょ!」(2013年の流行語大賞)
の流行語も随分と昔のことのようです。
フレーズ語尾を上げ気味にするゆすり音調で話してはいるものの、十分な間を置いたり、直ぐに音を立て直したりすることで、話し方にメリハリをつけています。
高音域で早口気味なのは高田さんと似ているんですが、唯一違う点は、
フレーズの区切り方が林先生の方が短めという点です。
例えば
「自分の言葉が相手に伝わるという点で考えると、講師と販売員は共通していますね!」
という文があったとしましょう。
高田さんは、商品セールスの場合、ほぼ一気に話すでしょうね。
読点「考えると、」の後の「講師」からほとんど間をとらずに音の立て直しに入ると思います。
ところが林先生の場合は下のような区切り方をするのではと推測します。
(/)の箇所は切らない場合もあるかもしれないという推測の元です。これは、いわゆる学校文法でいうところの文節で間を置く話し方なのです。
さらに、同じ内容のことを話す場合でも林先生の言葉の選び方は、分かり易さです。
実に明快な結論に導く言葉とキャッチーな例を使う事で、聞き手に伝わってきます。
ただし、タレント、林君として出ている時と、先生とでは発話のキャラクターが違っています。これはこれで味があります。こうなってくると役者 林修ですね。
タイプ4.元祖劇場型 小泉純一郎元総理
キャラクターを前面に押し出して、聴衆を引っ張ったといえばこの人でしょう。
から始まり、郵政民営化を果たした郵政解散を行ないました。が
あれは一体何だったんだろう?
という疑問もないわけではないです。
それはそうと、パフォーマンスひとつで国民の反応がこれだけ違うんです。
僕が
は、この頃からずっと生徒さんに伝えていたことでした。
とにかく小泉純一郎さん(以下、小泉パパ 敬称略しますm(_ _)m)のワンセンスを短くしての発話が分かりやすかったんです。
この頃(2002年から2005年)は話し方ブームだったような気もします。齋藤孝さんの話し方、きれいな日本語などをテーマにした本も売れていました。
話を戻しましょう。
声を演説のやり方にどう絡めていくか?
それで小泉パパの答弁を見ていたんですが、実は声そのものよりもプロソディ(特に緩急、メリハリ、間)が上手いと感じたんです。
始めは管元総理なんですが、2:47辺りから小泉パパご登場!3:34位から爆笑モノです
(^◇^)
即興で自分の本心を語る。語りかけに熱意が入っているスタイル。ハッキリとした強弱、時にはラップ?と思わせる音節単位を意識した発話。
と思えば、充分に間をとって
と促す姿は役者です。流石は元祖劇場型。
タイプ5.父のイイトコどりと独自のアレンジ 小泉進次郎さん
人気者だった父親を尊敬しつつも、自身の発話スタイルを貫こうといている二男小泉進次郎さんです。長男の小泉孝太郎さんは、役者としてご活躍。DNAは受け継いでいますね(笑)
さて、
- 充分な間をとること
- 自分が話す場合、自分のペースを崩さず貫く姿勢もある
- 左右均等に目配せをし、聞き手を飽きさせない(視線デリバリーの達人)
は父親譲りです。
僕が感じたのは、語頭(フレーズ頭)と語尾の部分です。特に語尾はお父さんよりパシッと切っていることが多く、その後の間をどうとるかで印象がずいぶんと違います。
声そのものは、押さえた中低音を基準としているように感じました。
ただし、余分な力を入れて押さえつけているのではなく、しっかりとチェストボイスとしての響きは保たれています。
最後に、「小泉進次郎vs池上彰 @コンビニ前 衆議院議員選挙 報道特番」なんていう動画がアップされていました。
もう3年も前の動画ですが、新次郎さんと池上さんの生トークが結構おもしろかったです。興味を持ったみなさん、見てください。
小泉進次郎vs池上彰 @コンビニ前 衆議院議員選挙 報道特番 2014年12月14日
まとめ 声と共に大切なもの
今回、四天王+もう一人を書いていて大切なコトを発見。5人に共通していることです。
それは、
間のとり方
です。
惹かれる声、魅力ある声、味のある声など良い声となる要素も勿論大切ですが、プロソディ、特に間をどうとるのか?5人の発話の天才が常に意識していることだと判断。
発話の天才だからこそ、ご自身で探究している事は言うまでもありません。
なお、プロソディについてはこちらをご覧ください。