ボイトレとシャドウイングの蜜月関係

shadowing_IC 納得!伝えることばの心得帳

あなたは、シャドウイングという方法をご存知でしょうか?
語学学習の中では結構有名な方法なので、知っている方も多いのではないでしょうか?

今回は、このシャドウイングの練習をボイトレと絡めると、と~っても役に立つことをご紹介しましょう。

 

シャドウイングとは♪

シャドウイングとは、モデルの音声を聴きながら、直ぐ後を追いかけるようにして同じように復唱する方法です。

ワンセンテンスが終わって復唱するリピーティングとは違います

発話のシャドウイングは、1950 年代後半に研究手法として採用され、後に音声言語知覚や吃音症(どもり) の研究で使われました。

よく知られているのは、同時通訳を行なうための訓練用プログラムとして使われていることです。2000年代になり、言語教育の中で再びブームになったことがありました。

このシャドウイングは、今でも効果的に使われていることが多いというわけです。

  • 耳(聴覚)の訓練
  • 「聞く」から「聴く」への移行
  • 言語のアクセント(高低や強弱)やイントネーションの練習
  • 脳の筋トレ
  • ワーキングメモリー

【ワーキングメモリー】作動記憶、作業記憶

短期記憶の一種で、心理学者バッドリーが提唱しました。

会話や計算、判断、推論など、さまざまな認知的な活動の基礎となるものです。

意識に上がってきている情報の処理をしながら一時保持を行います。処理と保持を同時にと言ってもいいでしょう。

ただし処理に頭を使いすぎると保持ができないといったことになってしまいます。ワーキングメモリーは、トレーニングである程度は伸ばすことが出来ますが、容量には限界があります。

シャドウイングのやり方 基本

 

shadowing how-to

上のグラフを見てください。

赤の曲線部分がモデル音声です。青の曲線部分がシャドウイングしているという意味で描いてみたんですが、前のフレーズが終わってから言うと、次のフレーズにかぶってしまって音が聴き取れません。

これは、後で出てくるディレイ・シャドーイング(delayed shadowing)やラギング(lagging)のような超高等テクニックです。当然いきなりは無理です!

 

そこで、下のグラフのようにモデル音声のすぐ後を追いかけるようにして同じように発音してみるわけです。緑の曲線部分にあたります。

自分の声の音量をモデル音声よりも小さくしないと、モデル音声が聴き取りずらくなります。なので、モデル音声のボリュームを聴いた時に、自分の声のボリュームを少し下げてみるなど、いろいろと工夫しながら試してみましょう。

シャドウイングの種類

では次に、シャドウイングの種類とそのやり方を紹介しましょう。

1.サイレント・シャドウイング(silent shadowing)

声を出さずに行うシャドウイング。

文字を読みながら行う黙読とは違います。
言い方を変えると、音だけで黙読するシャドウイングです。文字を読みません。文字を目で追っかけてしまったら、その時点でサイレント・シャドウイングではなくなってしまいますので注意しましょう。

 

2.マンブリング(mumbling)

プロソディ・シャドウイングの前段階として、小声でブツブツと言ってみる練習です。音楽でいうところのリハーサルのようなものです。

この段階で「シャドウイングが難しいなあ」と感じた場合、シャドウイングをする教材を変えてみることをお薦めします。教材のレベルが高いのかもしれません。

 

3.プロソディ・シャドウイング(prosodic shadowing)

通常シャドウイングという場合、これを指します。

意味を考えながらやると、ぐちゃぐちゃになって、それこそ頭が痛くなります。意味の解釈に注意を払う必要はなく、正確に素早く、聞いた音をそのまま再現してください。

プロソディとは韻律という意味です。韻律とは、アクセント、イントネーション、プロミネンス、拍の長さや間(ま)などの総称です。

話す・読むボイトレ-方法はプロソディの練習から
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4.コンテンツ・シャドウイング(contents shadowing)

プロソディ・シャドウイングを十分にやってからコンテンツ・シャドウイングに移りましょう。知覚と理解の総合的なリスニング練習だといわれているこのシャドウイングは、レベルが一段と難しくなります。
シャドウイングをしながら、意味解釈にも注意を払わないとならないからです。

 

ひとつのやり方としては、フォーカスの対象となるキーワードを決めてやってみましょう。

例えば、キーワードは、実質語(名詞、形容詞、動詞)と機能語(助詞や助動詞、接続詞)の結びつきや、述語を対象としたシャドウイングを行なってみる、などです。

英語の場合だと、動詞に着目したり、前置詞と名詞や動名詞などにフォーカスを当ててみるとよいでしょう。

 

5.ディレイ・シャドウイング(delayed shadowing)

ここからは、プロの通訳が行なっているトレーニングのご紹介です。

2語から数語遅れて行うのがディレイ・シャドウイングです。

☑ディレイ(delay)=遅らせる(de「全く」+lay「そのままにしておく」)。

 

先ほど「シャドウイングのやり方 基本」のところで、グラフを示しながら前のフレーズが終わってからのシャドウイングは難しいことをお話しました。

ワーキングメモリーのところで容量には限界があるということを書きましたが、ここまでくると認知の負荷がとても高いために、ちょっとやそっとじゃ太刀打ちできません。

母語である日本語のスピーチでも大変なのに、英語⇔日本語の変換になると、頭の中はものすごいことになります。

 

とはいうものの、音楽の分野では昔からやっていることで、輪唱(同じ旋律を一定の間隔、小節数でずらし、追いかけるようにして歌う)は、ディレイ・シャドウイングそのものですよね♪

6.ラギング(lagging)

ラギングは、ワンフレーズ遅れて発語発話するやり方です。

ラギング(lagging)=lag「遅れる」。タイムラグのラグです。普通リピートと異なり、語やフレーズをひとつズラシやふたつズラシをさせながらリピートする方法です。

 

ディレイ・シャドウイングもラギングも結構大変です。僕はどちらかというとラギングの方がやりやすいかなあ?と感じています。

知り合いにプロの通訳の女性がいるんですが、スラスラとラギングが出来て、それはもうマイスター級(笑)です。

もちろん人によってはディレイ・シャドウイングの方がやりやすい人もいるでしょう。

順番と教材の選び方

実は、上の順番通りに行なっていくと効果がある♪といわれています。

当然、リスニングだけをしたり、リピーティングを行なうこと。それも順番の中に挟んでおくことも重要でしょう。いろいろ考えられるので、生徒さんや学習者、トレーナーや指導者の工夫、オリジナリティが発揮される部分だと判断します。

外国語学習の順番一例

▼リスニング
▼マンブリング
▼オーバー・ラッピング
▼意味のチェック
▼プロソディ・シャドウイング
▼コンテンツ・シャドウイング
▼リピーティング

 

次に、教材の選び方なんですが、ドラマ物の台詞はシャドウイングには向きません。沈黙や言い切り、独特な間などの話者交替(ターン・テイキング)があるからです。

一方通行の情報提供の方が望ましいシャドウイングの材料となります。

例えば、ニュースを読み上げるアナウンサーのシャドウイングしてみる。あなたのお気に入りの気象予報士、お天気キャスターのお兄さんお姉さんをモデル音声にしてシャドウイングする。ラジオの朗読を聴きながらシャドウイングするなど、教材はいくらでも転がっています。

某局のラジオの外国語講座(英語でもドイツ語でもロシア語でも何語でもよい)で練習するという方法もありますね。

ボイストレーニングとシャドウイングとの関係

ここで、両方の関係についてお話します。

結論はこうです。トレーナーと生徒さんの工夫次第でボイトレのメニューに入れることが出来るということです。

シャドウイングをご存知の方は、話しことばのボイトレの方がイメージしやすいかと思います。話しことばの場合、日本語でも外国語でもできるんですが、こんな活用例も。

英語の歌がかなり苦手な生徒さん(女性)がいました。それでも本人は歌えたらステキだなあと考えていたようです。

考えた結果、マザーグースの歌から入ることにしました。まず、歌のメロディを除いたところで英語の発話特有のリズムに慣れてもらうために、シャドウイングを試みたわけです。

マザーグースの歌を歌う前段階として、プロソディシャドウイングで朗読を行なってみました。

今ではその生徒さん、レディー・ガガ(Lady GaGa)のある曲を課題曲にして歌っているほどです。

一見関係ないと思えるようなことも試してみる事で発見が生まれてきます。

ある意味そんなクリエイティブな空間がワンバイブスレッスンでは行なわれているわけですね。


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