突然ですが、あなたは『い抜き言葉』を知っていますか?
居抜き?物件ではなくて?
はい。その「居抜き」ではなく、「い」を抜く言い方のことです。
【居抜き物件】
居抜きとは、設備や什器備品、家具などがついたままで売買または賃貸借されること。オフィスや店舗物件で、前に借りていたテナント入居者がいなくなっただけで、設備や内装、造作物が残っている状態。そのため営業をはじめやすい。
というわけで、今回は『い抜き言葉』についての記事です。
『い抜き言葉』は話し言葉
この『い抜き言葉』なんですが、日本語を学んでいる外国人にはとりわけ難しいようです。なぜなら、教科書ではそんな習い方はしなかったからです。
例えば、スリーエーネットワークから出版されている『みんなの日本語』という教科書があります。この本の初級Ⅱ-第31課に出てくるのです。そんな習い方はしなかった言い方が・・・。
「~ている」から「~てる」
つまり『い抜き言葉』というのは、は「~ている」の「い」を省いた言い方なのです。
- 料理を習おうと思っています。(みんなの日本語初級Ⅱ 第31課 P.45)
- 料理を習おうと思って ます。
- あした申し込もうと思っています。(みんなの日本語-初級Ⅱ 第31課 P.47)
- あした申し込もうと思って ます。
- 寝ているからもう少し静かにして・・・。
- 寝て るからもう少し静かにして・・・。
イ形容詞でもイ抜く!
一方、この『い抜き言葉』、イ形容詞でも「イ」を抜く傾向にありますね。さらに抜いた「イ」を促音化(小さな「っ」で発してしまう)することが多いようです。
すごッ。(凄い)
さむっ。(寒い)
でかッ。(デカい=大きい)
うまっ。(上手い)
【イ・ナ形容詞】
イ形容詞 学校で習った文法用語では形容詞。人の感情や感覚、物事の状態や特徴、性質を表す。 例)嬉しい、寒い、美味しい など
ナ形容詞 学校で習った文法用語では形容動詞。物事の性質、有様、状態を表す。話し手の判断で表されるものが多い。 例)きれいな、静かな、便利な
書き言葉で使う場合に注意
さて、よく見ると冒頭のタイトルも『い抜き言葉』ですね。『い抜き言葉』を知っていますか?
にしないと、ご年輩の方々から注意されるかもしれませんよ。(笑)
要するに、話し言葉では使えても書き言葉では使い分けた方がよい言い方、それがこの『い抜き言葉』なんですね。使い分けた方が良い理由は、話し言葉形式で書くブログやSNSの投稿、友人同士のLINEのやりとりでは、「い」が抜かれる割合が高いからです。
いずれにしても、仕事のメールとして書くとき、公式文書の場合は、「~ている」にしましょう。
若者言葉が悪いのではなく、状況に応じて使い分けて(い)くこと、スタイルを変えて(い)くことが大切に思えます。
参考:ら抜き、れ足す、さ入れ言葉
さて、この『い抜き言葉』から「ら抜き、れ足す、さ入れ言葉」を連想したあなたもいらっしゃるかもしれませんね。この3つはとりわけ「若者言葉」の代表格とされてきました。(もちろん、若者言葉で他の言い方もあります)
とりわけ室長がこの中で気になっている言い方があります。20年ほど前は「ら抜き言葉」でしたが、ここ10年「さ入れ言葉」が気になって気になって仕方がないのですよ。
この件は、話し言葉レッスンでも生徒さんに伝えている内容ですね。
ちなみに、この記事を書くにあたって参考にした本は、以下のとおりです。
【参考】
泉均 著『日本語教育能力検定試験 合格キーワード1400』晶文社
スリーエーネットワーク『みんなの日本語-初級Ⅱ』
サンマーク出版 アン・クレシーニ、宮本隆治 共著
『日本人が無意識に使う日本語が不思議すぎる!~外国人目線で再発見したすごい日本語~』