コミュニケーションを考えた場合、他の人たちとの交流の振る舞い全般を表すとしたら、当然声だけではなく、その周りにある情報、相手の反応、自分の考えや感情、ボディランゲージなどにも目が向きます。
今回は、「声と非言語コミュニケーション」というタイトルで書こうとしたのには、改めてあなたと考えたいことがあるからです。
一体それはどんなことでしょうか?
ここを確認しておかないと、どんなに良い声で歌ったところで相手に伝わっていかないからです。これは歌うことよりも日常の会話の方で気づくことが多いかと。そう判断しています。
それでは、一緒に見ていきましょう。
ボイストレーナーが考える言語と非言語のこと
まずは結論、
- 声と非言語コミュニケーションは、相乗効果、または補いあうモノ
- 手話と非言語コミュニケーションも相乗効果、または補い合うモノ
と結論づけることができます。
当たり前の事なので拍子抜けしちゃいましたか?
それでも補い合えず、苦しんでいる人がたくさんたくさんいるのです。
例えば、
う~ん。と言っても、その「はい」って、
- 理解しました!なのか
- ただ返事をしておけ!なのか
- その他に意図していることがあるのか?
コンテクストの高い日本語だと、「はい」と言われても、判断できない場合があります。
別の例では、自分の主張をまくし立ててくる人。「間」をとらずに話す人です。せっかく声が良いのに、伝わる内容は半減です。
さらに、相手と仲の良い時には相手の言うことや内容に共感できるのに、一度喧嘩をしたら入ってこなくなる。自分の想いで通じ合えない痛みや苦しみとなっている。
・・・などです。
こういったやり取りを深く学ぶことを会話分析、談話分析といいます。
アルバート・メラビアンの法則を復習
では、まずひとつめの「声と非言語コミュニケーションは、相乗効果、または補いあうモノ」からです。
アルバートメラビアンの法則については関連ページをご覧ください。
パラ言語情報とプロソディ(韻律)
【パラ言語情報】
話し手が聞き手に与える言語情報のうち、イントネーション、リズム、ポーズ、声質といった言語の周辺的側面。周辺言語。
メラビアンの法則でいうところの「声の調子(38%)」の部分です。
例えば、「何時ですか?」という言い方は普通に言えば時間を訊いていますが、言い方を変えることによっては遅刻を叱責している場合もあるます。この「言い方」がパラ言語情報となって相手に届くわけです。
【プロソディ(韻律)】
パラ言語情報と似ていますが、この用語は、音声の分野に使われることが多いようです。韻律とは、アクセント、イントネーション、リズム、速度、間のことをいいます。実際の会話の中ではそれらの特徴が絡み合って出てきます。
相手との信頼関係構築(ラポールということ)
相手と信頼関係を築いていなければ、どんなに素晴らしいことを話しても相手に伝わりません。パートナーとの仲が良い時と悪い時に行なっている会話。その内容の伝わり方がどれほど違うのか?考えてみると分かりますよね。
また、よぼよぼで白髪の老人がママ友のいる公園で、政治の話をしても怪しまれますが、書斎の中で同じような話をすると、
と、感じることでしょう。
言語としてのスキル
▼相づち
相手の意見、感想を受け止め、受け入れるために首を縦に振りながら「うん、うん」「ふん、ふん」と言いながらうなずきます。
ほとんど、相手の発しているフレーズの出口、言葉尻で打ちますが、相づちと返事の違いは何でしょう?
ここでは
- 相づちは、フレーズ(語句)の切れ目で行うもの
- 返事は、受け答えとしてセンテンス(文)の終わりで行うもの
としておきましょう。
日本人は相づちの頻度が高いといわれています。
▼バックトラッキング
オウム返しの意味。これを言うことで相手が
という、会話が「Yes」の方向に進んでいきます。
バックトラッキングのポイントは、反復と要約です。
- 反復は、相手の話した事実や感情を「〇〇だったんだ」のように繰り返す。
- 要約は、適当なところで「つまり、〇〇〇ということですね」と返す。
非言語としてのスキル
▼うなずき
相づちを入れる時に、首を縦に振る仕草、振舞い。相づちとうなずきが、セットになっているのは、このふたつを(ほぼ)同時に行なうことで、相手との共同作業で会話をしていますよ。と伝え合うためだといわれています。
因みに、首を横に振りながら今年(2018年ノミネート)の流行語大賞に選ばれた
を言ってみてください。(笑) ものすごく妙な感覚ですw
▼ミラーリング
相手の振舞い、動きを合わせていくスキル。姿勢、立ち方や座り方、身振りや手振り、表情まで合わせていきます。一体感や気づきを得たいときに行ないます。
▼ペーシング
相手の話し方に合わせてゆく、NLPでは非言語のスキルとして分類されています。相手のパラ言語情報をはじめとして、考え方や感情、相手が何を求めているか?期待されていることに合わせてゆくといった意味です。
ワンバイブスでは、合わせる前に「添う」ということに重きを置いています。
以上のことを表でまとめるとこうなります。
声や言葉にどう関係するか | 言語として | 非言語として |
会話のリズムを相手と共有する | 相づち | うなづき |
聴く、訊く、観察する | バックトラッキング | ミラーリング |
パラ言語情報、考え方 | ペーシング |
「手話」は言語です
続きましてふたつ目、「手話と非言語コミュニケーションも、相乗効果、または補いあうモノ」についてです。
声が出せるあなたは、声というその恵を忘れてしまうこともしばしば。だからこそ、「声」を大切したいのです。
声の大切さは、声帯ポリープや声帯結節など声の障害で声が出しにくくなってしまった人、失語症になってしまった人、脳梗塞を患ってしまった人にとっては、言わずもがなです。
素朴な疑問を抱いて、こう訊いてくる人がいます。
ご存知の方もいらっやると判断しますが、
「手話」はちゃんとした言語なんです!
【手指法】…手や指や腕を使う動作
【非手指動作】…顔の表情や視線、首やあごの動き
これらを同時に使う視覚に訴える言語なんです。(視覚言語)
五体満足の人が話す、いわゆる日本語の統語構造(文法)とは異なる日本手話。日本語のとおりに単語に手話単語をつけて話す日本語対応手話。その中間の中間手話。
そして、手の形を文字表記(仮名)に対応させた指文字があります。固有名詞や外来語などはこの指文字を使って言葉を交わします。
言語と非言語の狭間で思うこと
某有名女性歌手(複数名います)のように、MCはド下手くそ!でも歌はうまい!この場合振り子の振れ幅が大きく、ある意味バランスはとれているように感じます。
しかし、声は普通に出るのに文字表記に頼りすぎている人もいます。
世代によって声で伝える人、LINEやメールで済ます人、その時の状況や気分によって使い分ける人など様々です。
声の重要性はどこへ行ってしまったんでしょう?
言語と非言語といった意味合いが、「声を出すのは音声言語、振舞い方は非言語」といった意味ではなく、言語は文字表記、非言語は絵文字やスタンプで忖度して・・・、という時代。
そうすると、歌の在り方もこれまでとは「ガラッ!」と変わってくるのかな?そう感じています。