同業者としての領域を守るために、また、ボイストレーニングの発展のために、そしてこれからも自分が微力ながら貢献させて頂くために、今回はタイトルにあることを書いていきます。
ボイストレーニングという仕事を行なっているトレーナーの方たちへ、また、受けようとする方へ、受けている生徒さんへお伝えします。
あなたのビリーフがボイトレに対しての
- ハードルを上げてしまっている場合
- ステレオタイプとしての見方になっている場合
もあるからです。
どういったことなのか?興味ある方は読み進めてください。
ボイストレーニングに怪しいものなどはない♪
今回の内容を一言で結論づけると、次のようになります。
トレーナー側も受ける側も引き出しを増やそう
ということになります。
- 受ける側は引き出しを増やすために、いったんバラそう
- トレーナー側は言語化できる引き出しを増やそう
ということです。
そうすると、生徒さんとして受ける側は、
「怪しい、変だ」
とは感じなくなりますし、トレーナー側も
「内容は素晴らしいのに、生徒さんが伸びていかない」
と決めつけなくなります。
もう「自分のメソッドNo1」で押し通せる時代ではないと考えています。
トレーナー側、生徒さん側 どちらも悪くはない
先日、ボイトレではないんですが、別のトレーニング分野のことをググっていたら、こんなサイトに出会いました。
また、別のサイトではこんなことも(要約ではなく、要旨として載せておきます)
確かにそれはそうだと思います。ただ、これには次の事が関係しているのかなと考えました。
短期間で効果、成果、結果を出したい場合にこのように考える傾向にあるようです。
生徒さんにとって良い声が出せれば、そのメソッドやメニューは決して怪しいとは言えないでしょう。何故なら、教える側は少なくともそれが出来ていますし、受ける側はその時は、全く出来ないか、出来たり出来なかったりする状態ですから。
受ける側の引き出し:いったんバラそう
受ける側の引き出しを整理するために、いったんバラシてみましょう。その後、並べて固め直せばよいわけです。別の記事でも書きましたが、これば言い方を変えると
自分自身と向き合う環境を作ろう
ということです。ステレオタイプの見方を横に置いて、バラしてみることです。このことは後で出てくる省略、歪曲、一般化とも関係します。
「バラす、並べる、固める」については音楽の演奏とも強く関係します。
トレーナー側の引き出し:言語化できる引き出しを増やす
認識からいろんな感覚が言語化できるかどうか?これはコミュニケーションにおいての大きな課題となります。
NLP(Neuro Linguistic Program:神経言語プログラミングの頭文字をとった言い方)の分野では、五感と言葉が脳内プログラムを構築したり起動させているといわれています。
言葉は発する方も受け取る方も体験に基づいていること(ビリーフだったり、マインドセットだったり)。
そのやり取りの中で、省略、歪曲、一般化が行われているということ。
省略とは、言わなくてもわかるでしょうといった以心伝心
歪曲とは、フィルターを通してその人なりの見方でとらえること(NLPの世界では歪曲に良いも悪いもないと考えています)
一般化とは、ステレオタイプの見方のように、「みんな」「すべて」といった言葉で表現されること
それは、教え方や伝え方そのものにもかかわってくることは、先日アップした記事にもSLAの分野から詳しく載せてあります。
さらに、その人その人にコミュニケーションの癖が表れているため、伝わりにくい分からないといったことが起こります。
同じ情報に接しても受け取り方は人によって随分と違うのです。
イメージ型
イメージや図、映像でとらえる人にとっては、ソフトクリームの先をつまんで声を出すことやアニメでお眼目キラキラで素晴らしい声が出せるのも、僕は見ています。喉を開く、頭のてっぺんに向かって声を出すという言い方もこれに当てはまります。
聴覚型
また、論理的に考える人は、先ほど出した例のように科学的トレーニングの裏づけとして発声用語や数字を使って伝えた方が理解しやすかったりもします。ただし、同じ内容で違う用語を当てているのかどうかの現状を伝えないとなりません。例えば、ウラ声とファルセットは同じなのか違うのか?中声とミックスボイス、ボイスミックスの違いなどです。このタイプの生徒さんに伝える場合、正解不正解という伝え方ではない方がよいと考えています。
身体感覚型
さらに、身体感覚が優れている人ですと、ボイストレーニングだから身体を動かすというビリーフがあるわけです。こういった生徒さんは、きちんと自分自身との身体と深く対話してくれます。気持ちの面から入っていったり、身体を使ったメニューの方がしっくりときますし、腑に落ちます。
もちろん、教える側も受ける側も複数のタイプを持っている場合もあります。
ボイストレーニングで失敗しない方法はいくらでもある
このように考えると、「正しさ」は人の数ほどあります。
トレーナー側が正しいやり方だと主張してレッスンしたところで、受け手側や生徒さんがそのように感じなければ、それは正しいとは言えません。
当然その逆もあります。
こういったズレに対して対応する能力は、まず理解する、次に添っていき、最終的に合わせてゆくことが望ましいかと感じています。
それでも、ネット上でのコミュニケーションやリアルなものも含めて、コミュニケーションのミスマッチは続いていきます。
コーチングでいうところの「未完了」ということになります。失敗は次への課題となります。
だからお互いに引き出しを増やしてゆくのです。
送り手となる側の引き出しを増やしていきながら、相手が一番良い反応できる言葉を選んでゆきます。聞き手も送り手になるので、引き出しを増やせるように観察したり発見したりを繰り返します。
黙っていたのでは伝わりません。それには、声に出して伝えてみること。ひとつの引き出しではなく、いろんな引き出しを出しながらです。慣れない引き出しを出してアウトプットしようとしても、それはシドロモドロになるでしょう。
それでよいのです。そこにフィラーが入ろうが良いと判断します。
同じ内容のことを別の言い方で伝えてみる。相手の立場により、相手の心理状態により、その中で相手が一番「ビビビッ!」ときた言い方を差し戻してもらう(フィードバック)。
その時、パラ言語はどうだったのかを客観的にチェックする。ボイストレーニングにはこういったレッスンメニューもあるのです。いや、ボイストレーニングだからこそ、こういったことが出来るのです。
【参考文献】山崎啓支 著『NLPの基本がわかる本』日本能率協会マネジメントセンター 2007年初版より