前回の「個人レッスンで改善したいこと」のお話はいかがでしたでしょうか?
これらの記事では、個人レッスン側ではなく、グループレッスン寄りに立ってお話を進めています。
また、ボイストレーニングのレッスン形態面を中心に書いています。つまり形と進め方です。レッスンの中身ではありません。
このシリーズも4回目となりました。
これまでの3回分は以下のような章立てでした。
☑ 1回目 個人レッスンとグループレッスン、それぞれの長所と短所
☑ 2回目 個人レッスンで担当するトレーナーのスタイルとタイプを見抜くコツ
☑ 3回目 個人レッスンで改善したい課題あれこれ
▼前回(3回目)のコラム記事です。
今回からは「ある形態」のレッスンを採り入れることで
✔ 生徒さんも
✔ 担当トレーナーも
✔ 教室、スクール側も
少しでも現状の不満が解消されないだろうか?
といった提案をいたします。
グループ単位のレッスン♪
ここ数年、ボイストレーニング業界以外で見直されてきたグループレッスンについてご存知でしたか?
日本語教師をされている方、日本語教育の勉強をしている方、小中高校の先生、または、小中学生のお子さんがいらっしゃるご両親の方は、授業をグループ単位に分けて行う方法を聞いたことあると思います。
ボイストレーニングのレッスンの場合
と、言われそうな世の中です。
一方、こんな意見の方も。
という人もいらっしゃいます。
ここで考えなければならないことは
ということです。
以前、僕はグループレッスンをやっていましたし、今、グループレッスンをやっているスクール、幾つもありますね。
ボイストレーニングのレッスンも、もっとこのようなグループ単位のレッスン形態を見直しても良いのでは?
そんな思いを抱いています。
グループレッスンの良さは意外と知られていない
何故グループレッスンの良さが埋もれているのか?
グループレッスンの良さが埋もれているからです。
個人レッスンの方が伸びると思い込んでいる場合もあるからです。
シンプルに言えば、生徒さんもトレーナーも自律、成長が出来るからです。
どういうことなのか?
それを日本語教育の教育観、学習観であるピア・ラーニング。そして現在、教育の現場でいろいろ言われている(先生方の頭を悩ませている?)能動的学修を例に挙げて、一緒に考えていきたいと思います。
ピア・ラーニング
ピア・ラーニングとは、トレーナーと生徒さん達、生徒さん同士が対話を通じて行う学びの形態のことをいいます。お互いに意見を述べ合うことによって進めていく課題解決型の展開となります。
同僚,同輩,仲間(peer:ピア)同士をお互いに支援することで、結果だけではなく、学んでゆく過程の大切さ。そして、新しい価値観を学べる事もできます。
ピア・ラーニングには、次のような効果があります。
- 競争から協働へと考え方が変わる
- 参加している貢献していると考えるようになる
- 理解していること、出来ること、伝えることの違いが分かる
- 生徒さん主体なので自律を促すことが出来る
- 生徒さんとトレーナーの関係は水平関係になる
- トレーナーの自律も出来る(←これが一番大きいのかも・・・)
- その他
これらをボイトレのグループレッスンと絡めて考えてみましょう。
今でこそ、ひとりで作詞作曲、カラオケがあるのでひとりでレコーディング、またひとりで演奏が出来ています。でも、もともと音楽の作業(制作、製作、表現含めて)他人との協働(ピア)作業が多かったはずです。
同じ生徒さん同士でレッスンをし始めると、はじめは恥ずかしいかもしれません。しかし、だんだん慣れてくると、お互いに出来ることと出来ないことの違いが分かってきます。ここでいう違いとは「歌が上手い下手」というトレーナー側の評価による差ではなく、個性だと思ってください。
トレーナーや生徒さん同士がこの個性に気づくと、生徒さん自身が
- 自分で練習さえすればできること
- 練習してもコツがつかめず出来ないこと
これらが分かってきます。出来ることは体感しているんですが、知っていることは理解で留まっています。
すると、出来る人が出来ない人に教えてあげる。ここで教える側は感じます。
教わる側は、自分の力では出来ないことなので、助けがあれば出来るというレベルを体感できます。そして、だんだんと独りでもできるレベルへと上がっていきます。
グループレッスンで生徒さん同士教え合うといったスタイルをお勧めしたいんです。僕がボイトレを習っていた頃、周りの友達がどんどんうまくなり、自分だけが置いて枯れている感じがしていました。その時に助けとなったのは、担当の先生の言葉以上に友達の励ましやコメントだったのです。
もちろんトレーナーが手を抜いて良いという訳ではありません。しかし、トレーナー側が懸命にやればやるほど生徒さんの学びは萎えるという景観もしています。こちらが汗かいて恥かいて軽く手を抜いた方が、生徒さんのため。成長が著しい場合だってあるからです。
個人レッスンだと、トレーナーと生徒さんが垂直関係になります。それはそれで師匠と弟子という関係性を作れてよいわけです。
一方、生徒さん同士ですと、技術、スキル、心理的な距離が近いので、スッと入ってくる場合もあります。
といった考え方もなくなってきます。
アクティブ・ラーニング
実は、このアクティブ・ラーニングよりも前に、日本語教育の世界では、前に出したピア・ラーニングを推めていたのです。
ここで、アクティブラーニングの引用します。
【アクティブラーニングの誕生】
2012年8月28日の中教審(文部科学省中央教育審議会)での答申でのタイトルで、「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」が出されました。ここの質的転換とは、「学生の教員からの受動的な受講から、学生が教員との意思疎通を図りつつ、お互いに刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し、答えを見出していく能動的な学修」と説明されており、この「能動的学修」が「アクティブラーニング」とカタカナ表記されました。そしてこの表記が、教育界ではキーワードとしてよく使われるようになりました。
【引用】ICTを活用したアクティブラーニング教育/アクティブラーニング(active learning)によるICT教育の形
それから2年後の2014年には、至るところでアクティブラーニングという用語が使われていたようです。
ところが、2017年2月に発表された小中学校の学習指導要領案では何故か「アクティブラーニング」という言葉は使用されていません。
主体的、対話的で深い学びというフレーズは、ピア・ラーニングのそれとほとんど同じですね。
「アクティブラーニングは、アメリカが元で出てきた授業改善のためのストラテジーや授業形態だったのです。現状はどうでしょう?
聞くところによりますと、講義の中に少しの時間だけ、学生の参加するシーンがあったり、授業の形態だけなぞっている調べ物のお勉強の領域になっているそうです。
学びの場.com 意外と知らない“アクティブ・ラーニングのねらい“
想像的、創造的、能動的なレッスン
やはり、
これで完璧!といった教え方はないわけです。
言い方を変えると、試してテスト。そして改善することの繰り返しなのではないでしょうか?
マンツーマンの個人レッスン形態で行なわれるよりも、グループレッスンで行なった方がよりよく改善できるのか?それでもマンツーマンの方が良いのか?
グループレッスンの「質」が個人レッスンと同じかそれ以上の濃さ、深さだったら、生徒さん側もトレーナー側もより良い気づき、勉強となるでしょう。
そんな感じがします。ピア・ラーニングやアクティブ・ラーニングを参考にしながら、もっとボイトレの分野にグループレッスンを浸透させても良いのではないでしょうか?
そうすると、個人レッスン形態も行ないつつグループレッスンという考え方になるんですが・・・。
続きは次回にしましょう。
ご興味のある方、続きを読んでみてください。ありがとうございます。