ボイストレーニングについてあなたが常日頃感じていること、それは思い込みかもしれません。
思い込みとは、人が持っているイメージや信念、信条のことを言います。これまでの経験で、または無意識的にその人なりの信念が備わっています。
思い込みに関しては、他の記事にも記してありますが、一度ここでまとめておきたい。そんな気持ちからこの記事を書いています。
それではご一緒に確認していきましょう。
うまくなることを遮っている思い込みとは?
さて、ボイストレーニングに限って言えば、声が良くなったり歌がうまくなったり、あなたが理想とする話声や話し方が伸びていくことを阻む原因があります。それを以下、3つのカテゴリー、10の思い込みに分けて記してみました。
ココでは決してトレーナー側が
自分のメソッドや教え方が正しいんだ。
と強制することでも、生徒さんや受講生の方も
先生とは○○○に決まっている。そういうものだ。
と主張することでもありません。
教える側、教わる側共により良い方法を探ってゆくことが大切なのです。一緒に確認していきましょうね。
ボイストレーニングそのものについて
まずは、ボイストレーニングそのものについての思い込みからです。現在でも多くの方が感じていることだと考えています。
1.ボイストレーニングは、プロ志望の人がやるものだ
その1はこちらです。
これだけボイストレーニングが普及している。にもかかわらず、まだこういった考え方をする人がいます。コロナが始まって少しずつ減ってきてはいるようですが・・・。
ボイストレーニングは歌がうまくなること!もちろんそれもありますが、それだけではありません。話す、読む、美容と健康、果てはスピリチュアルまで(ワンバイブスでは占い師さんが生徒さんとして在籍しています)、幅広い分野にまたがっているのがボイストレーニングだということは、もはや疑う余地がないでしょう。
ボイストレーニングの項目、内容について
次に、ボイストレーニングのそれぞれの項目、内容のカテゴリーから3つ挙げていきましょう。それは、腹式呼吸、発声と発音、ボイトレの用語についてです。
2.正しい腹式呼吸はひとつである
2つめは「正しさとは答えがひとつしかないこと」という考えに縛られている人です。
何も腹式呼吸に限った事ではありません。腹式だって様々なタイプがあります。ワンバイブスで知っている限りどのタイプも否定はしていません。何故なら、タイプの違う腹式呼吸でも体の使い方を観察すると共通項があるからです。
さらに付け加えるとトレーナーはやり方Aで出来ているから、やり方Aを伝えます。そのやり方でうまくなってほしいと願うからです。しかしです。生徒さんがやり方Aが出来るかどうかは、生徒さんの現状のレベルをチェックしないことには判断できません。
やり方Aで続けていくか?やり方Bに変えて伝えるか?トレーナーと生徒さんとのコミュニケーションの取り方がレッスンに反映されるのです。
▼呼吸のバリエーションについて
3.発声、発音はしっかりやらなければならない
3つめはこちら。
特に、発声は大きな声でやらなければならない。発音は全ての高さの音をハッキリ言わなければならない。あなたがこのように感じていたら、それは思い込みです。
実は、引き算の発想というものがあるのです。音楽でもmpやp(メゾピアノやピアノ)を使ってこそ強弱、ダイナミクスが出てきます。何もバカでかい声を出さなくても、小さく出しても良く聞こえる声、これが共鳴であり響きなのです。
話す読む分野でもメリハリをつけるためには、小さく、ゆっくり、長めに、速めに言ったりすることで、効果的なプロミネンスが得られます。
つまり、マイナス、引き算の発想をすることによって、他の部分から際立たせることが出来れば良いわけです。
4.ボイトレ用語とその意味づけについての思い込み
4つめに移りましょう。
ボイトレの用語についての解釈は、伝えるトレーナーによって、または受け取る生徒さんによっても違います。イメージで意味づけている人、身体感覚で意味づけする人、生態学解剖学を勉強して意味づけしていく人、様々です。
ポイントはあなたのインプットがどのようなタイプだとしても、複数の意味を理解できることと、求めている声を出せること。それが出来れば、
ひとつの用語には、ひとつの意味しかないに決まっとる。
といった思い込みはなくなるでしょう。
▼お腹から声を出す
▼喉を開く、喉を開けることとは?
▼声帯を閉じることと、地声と裏声について解釈の勘違い
5.ボイトレのメソッドの正しさについての思い込み
5つめです。
平成の時代によくありました。
この正しいメソッドさえ繰り返せば、あなたも3オクターブが手に入ります。
または、
3週間で3オクターブが手に入ります。
どうも我々(日本人だけ?)は、このような「正しい」ということばと、短い期間で効果が出るというナンパ?殺しキャッチ?に弱いようですね。仮にですよ、3週間で3オクターブが出せたとしても歌うジャンルを変えて試すと歌えるのでしょうか?このことは2つ目の項目とも関連しますね。
小高い丘に登ったからこそ見える景色もある(俯瞰ができ、次のステップが見えてくる)のです。すると、次のステップに行きたくなるのは自然な流れなのです。
▼受け方についての勘違い
ボイストレーニングの習い方について
続きまして「習い方、学び方」です。実のところ、このカテゴリーでの勘違いや思い込みが一番多い。そんな気がしています。
6.上位コンテンツに正しいメニューが載っている!
6つめなんですがここ数年、特に多い傾向です。
ググったりタグったりして検索トップに上がっているボイトレコンテンツが自分にとって正しいメニューか?というとそれは違うかもしれませんよ。
検索をかけた、トップに上がっているコンテンツをクリック、それを試してやってみた。そこで上手く出来なかったらどうしますか?
仮に出来たとしても、そのやり方で本当に合っているのかどうか?もっとレベルの高い練習方法はないのか?いわば、全体像も分からないフィールドの中で、正解を求めていこうとしているわけです。
やはり、トレーナーのサポートは必要不可欠になってきますね。
7.ボイストレーニングは手軽に出来る
7つめは、その6との関連で説明できます。
手軽にできる。これは「思い込み その4」との関連になりますが、これらの言葉にもいろんな解釈が出来ると捉えておきましょう。そうでないと、インプットだけで出来ているつもりになっている傾向が高いからです。
手軽にできるとは、直ぐに取り掛かれるという意味なのか?すぐに結果が出るという意味なのか?
それで、手軽にできなかったらあちこちの体験レッスンを受けまくる。ただそれだと全く使い物にならないため、ボイトレジプシーがうじゃうじゃいます。
大切なのはアウトプットによる再現性です。そうでないと、あなたの声の軸が定まっていくためのボイストレーニングにならないからです。
8.ボイストレーニングは1回習ったらコツがつかめる
8つめも、その6や7との繋がりで説明できますね。ラクしてできる。そしてカンタンにできるコンビニ・ボイトレ?ファスト・ボイトレ?インスタント・ボイトレ?
この傾向は、よくオンライン形式でのボイストレーニング講座を受講する生徒さんや受講生さんにありがちです。こんな方たちに僕は次のようにお伝えしています。
出来る限り継続して受講することをお勧めします。他の先生がやっているボイトレレッスンや講座を受けてみることも良い比較になりますから。
1回やってコツがつかめるのなら誰だって苦労はしませんし、奥深い世界は覗けません。残念ですね。
▼ながらボイトレはカンタン手軽に出来る?
9.オンラインのボイストレーニングはトレーニングにならない
9つめは、まだこのように考えている人が多いのではないでしょうか?確かにオンラインには工夫が必要です。しかしこの2年、工夫をしながら試行錯誤することで、生徒さんと新しいメニューを作ることが出来た!なんていうことも数多くありました。
ZoomもPCやタブレットとの組み合わせにより、背景をぼかしたりバーチャルでいろんな背景を楽しめます。あとは使い方の問題?大丈夫!一緒に試行錯誤しましょう。
なぜなら、オンライン形式で試行錯誤しながらレッスンした生徒さんは、伸びる傾向があるからです。
10.習う順番は、立ち方と腹式呼吸から
最後、その10です。もしかしてあなたは、
教わる順番は基本から。
このように考えていませんか?確かに基礎からじっくり行うやり方が伸びる人はこのやり方でも大丈夫です。でもそうでない人もたくさんいます。
実は、教える順番なんて関係ないのです。例えば、リズムから教えることだって可能なのです。
リズムのパターン→息継ぎとリズムの関係→曲サビの部分のリズム(テンポ)キープ
など、リズムという項目を深掘りしながら他の項目とつなげることも可能なのです。これに関しましては習得順序と発達順序という記事を書きましたので、参考にしてください。
以上、ボイストレーニングについての思い込みを3カテゴリー10項目として挙げてみました。結論を言うと、「楽器習得と同じように、カンタン手軽にスグ出来ることは声の世界でもありえない!」ということです。あなたがボイストレーニングを行なう場合の、スクール、講座、レッスンを選ぶ場合の参考をしていただけると幸いです。