歌の出来や不出来は誰が判断するのでしょう?以下、これを評価と置き換えて話を進めていきましょう。
歌だけではありません。ナレーションや発話だったり、発声や発音の評価は誰が行うのでしょうね?
えー!そんなの先生に決まってるじゃん。
プロデューサーや(映画)監督は評価しないんですかぁ?
こんな声が聞こえてきそうですね。
しかし、本当にそうなのでしょうか?トレーナーだけが生徒さんの表現(歌、ナレーション、朗読、プレゼンなど)に対して評価するべきなのでしょうか?
主役は生徒さん!伸びていくために・・・
ボイストレーニングを行って伸びていくのは生徒さん自身です。まず、ここを押さえておきましょう。
つまり、生徒さん自身が自分の声や歌い方、話し方を管理するために必要なことだ。このように言い換えられるのです。(僕はよく、生徒さん自身が自分のボイストレーナーになりましょう!と言っています)
すると、管理するためには評価が必要になることが分かってきます。そうです。トレーナーだけでなく、生徒さん自身も自分を評価しましょう。と結論付けることが出来ます。
相対評価と絶対評価
ここで、評価の区分についてみていきましょう。評価するためにはテストやチェックをしないとなりません。分け方については切り口によっていろいろです。ここでは、相対評価と絶対評価という分け方で進めていきます。
相対評価
まず、相対評価とは、あるコミュニティやグループの中で他人と比較をします。その比較で自分自身の到達度を評価することです。
分かりやすい例は、偏差値や通知表の5段階評価などです。
集団の中で何番目か?を拠り所にして評価をするため、教える側は管理しやすいです。しかしながら主観が入りにくくなります。声を道具とした歌や話し方の場合、感性という部分も捨てられないので、相対評価だけでは十分ではないと判断しています。
絶対評価
一方、絶対評価では、設定された目標に対しての到達度がどうか?という点から個人の成績を出していく評価です。
集団(コミュニティやグループ)とは無関係に到達度を示すことが出来るので、生徒さん一人ひとりの指導に向けて具体的な指針が得られるのです。
例えば、歌でいうと生徒さん個人が評価されるため、ダイレクトにトレーニングメニューの改善をすることが出来ますし、次のステップの動機付けにも結びつきます。
トレーナーの評価と生徒さんの評価
さて、僕がボイストレーニングを習っていた20代の頃のことを思い出したので、少し触れておきましょう。詳しくは下のブログカードをクリックしてご覧ください。
あの頃4ヶ月に1回の割合で、社長、プロデューサー、担当の先生の前で歌の実技試験を受けていました。
今だから言えることは、
この時期、認められたい気持ちばかりだった。そう思えば思うほど、相対評価に走りたがる。この時、絶対評価の基準があったら変わっていたかもしれないな。
すなわち、相対評価と絶対評価はどちらかに偏りすぎても良くない!ということなのです。
▼ボイストレーナーになった経緯(ストーリー)
生徒さんも自分自身の評価をしよう
いずれにせよ、生徒さん自身も自己評価ができるようにしてください。これは、レッスンの冒頭で復習も兼ねてすり合わせていますよね。
前回のレッスンで良かったこと、気づいたことを教えてください。
このやり取りを続けてゆくと、脳がイイこと探しをします。すると、モチベーションの維持、やる気のアップに繋がります。それだけでなく、生徒さん自身が自律型の人間に変わっていきます。このようにして、自分自身を評価できる土俵をトレーナーと一緒に作ることが出来るのです。
評価というフィルターを薄くする
これは評価をすることに対しての敷居を低くするという言い方にも置き換えられます。
そのためには、いつかの記事でも触れました。
~(略)~ 伸びる方法は2つということをお伝えします。これはワンバイブスの考え方に近い部分でもあったので、嬉しくなったと同時に確信が持てるようになりました。
① 自分で教えてみる:自分の中にあるものをアウトプットすることで「理解度が判断」できる。
② 学習教材を作る:作ること で新たな 発見 が生じ、「深い学び」となり成長につながる 。 (井庭 2019)
この2つを相談しながら進めてゆくことが大切。 コツはコツコツとテスト改善していくことなんだと。
まとめ お互いに評価しあって得られるもの
ところで、日本語教育の世界には、「パフォーマンステスト」というテストがあるんですがご存じでしょうか。言語の運用・産出能力を示すテストで、身近な分かりやすい言い方をすると「実技テスト」です。(笑)
運用・産出能力とは、スピーチ、面接での自己PR、プレゼンテーションといった話す力があります。片方でレポートや論文といった書く力も当該能力とされています。
ちなみに歌うことは、確実にパフォーマンステストになりますからね。
いずれにせよ、パフォーマンステストによる評価は、ルーブリックという評価基準で定められています。いわば、予め習得すべき項目内容と到達のレベルが設定されているということです。
生徒さんとトレーナーでこのような基準シートを作成してテスト改善を繰り返していくことで伸びること間違いありませんね!!
【参考文献】言語デザイン研究所 泉 均著
『図表でスッキリわかる 日本語教育能力検定試験合格キーワード1400』晶文社 P.190 P.198