歌唱と発話、言語を超えた共通点があった!

歌と発話についての写真 ボイトレジム

皆さんは、歌と発話の関係について考えたことはありますか?

分かりやすい例として大好きな曲の詞を音読してみると、音読の方が早く終わりますよね。当然歌には音符の長さがあります。また、高さも発語の高さより歌うそれの方が音域が広かったりしますよね。

男性トレーナー
慶應大学・音楽学者

歌は発話の単なる副産物として生まれたのか?それとも人間社会の中で独自の役割を得て進化したのか?

ここでは、歌と発話の関係を科学雑誌を参考にしながら要旨として記事を書いていきます。

歌の進化と音楽の普遍性:人類とメロディの深い関係

日経サイエンス2025-04

日経サイエンス2025年4月号

まず、今回参考にした雑誌は日経サイエンス2025年4月号からです。

続きまして課題の提起です。

音楽はどのように進化してきたのか? 文化や言語が異なっても、音楽には共通するパターンがあるのか? そんな疑問に答える研究が「The Evolution of Music(音楽の進化)」です。本記事では、最新の研究データをもとに、歌の時間変化やメロディの共通点について解説しています。

音楽はどの時代・文化でも似た特徴を持つ?

科学者たちは世界中の異なる文化圏の楽曲を分析しました。異なる語族の言語にもかかわらず、ピッチ(音の高さと安定性)、リズム、テンポなどの共通パターンを発見したのでした。

世界の言語には様々な系統による分類の仕方があります。似たような歴史的関係のある言語動詞を「語族」といいます。

例えば、オーストロネシア語族(インドネシア)、アフリカ諸言語(アフリカ)、インド・ヨーロッパ語族(スラブ語派、ゲルマン語派、ケルト語派、ロマンス語派、ヘレニック語派、インド・イラン語派)、系統不明な語族(日本)、などの音楽を比較しても、「音の上がり下がりのパターン」や「テンポの変化」には驚くほどの共通点が見られたのです。

研究のポイント

この研究のポイントとしては、ピッチとテンポのふたつが浮き彫りにされてきたのです。

【復習●音程】ピッチ+インターバル+チューニング

ピッチ(pitch) とは、音の高さ(高低) の調子のこと。音程が悪いという言い方は、ピッチが悪いということ。別の意味では、基音そのもののことをピッチともいう。

インターバル(interval) とは、 音の高さと低さの間隔(隔たり) のこと。
例えば、「ドとラの6度のインターバルは、ピッチがとりずらい」という言い方をします。

チューニング(tuning)とは、音の高さなどの調律が取れている状態(一致している状態)のこと。 同調。 周波数が合っている状態。

そして、さらに「そのピッチを補正する」。当教室ではこのような用語の使い方をいたします。

補正おぎないただすこと(広辞苑)
矯正=欠点をなおし、正しくすること

ということも付け加えておきます。

ピッチの推移

まず、ピッチの移り変わりです。

  • 音の高さは、文化を超えて似たような変化をする。
  • 特定の音域がよく使われ、急激な変化は少ない。
メロディとテンポ

続きましてメロディとテンポ(速度)です。

  • 速い曲でも遅い曲でも、リズムの構造は共通する傾向がある。
  • テンポが違っても、メロディの流れには一定の法則性がある。
歌詞の音韻とメロディの関係

さらに、音韻とメロディの関係です。言語が違っても、メロディと歌詞の音韻パターンには共通する法則があるというのです。

これを読んだときに僕は少しびっくりしました。

なぜなら日本古来の音階

民謡音階みんようおんかい」、「律音階りつおんかい」、「都節音階みやこぶしおんかい」、「琉球音階りゅうきゅうおんかい」にも当てはまるらしいのです。

また、話し言葉がよりメロディアスに聞こえるシナ・チベット語族(中国語、チベット語、タイ語など)に代表される声調アクセントの言語にも、同様の傾向を見出したらしいのです。

  1. 歌唱は発話に比べてゆっくりしたペース(テンポ)で進む
  2. 歌唱のピッチは高め
  3. 歌唱のピッチの安定性もわずかに高い

【引用】日経サイエンス社/日経サイエンス2025-04

スカボロー・フェアでの具体例

研究では、イギリス民謡「スカボロー・フェア」を挙げて細かく分析しています。この楽曲には、安定したピッチの変化が見られ、それでいて他の文化圏の楽曲とも共通する特徴があるといわれるのです。

ピッチの変化は一定のリズムを持つ

その結果、次のような特徴が見つかりました。

  • 半音階的な音の揺れが少なく、安定した音階で歌われる
  • 他の文化圏の民謡とも共通点が多い

つまり、どんなに文化が違っても、人間が「心地よい」と感じる音楽のパターンは共通している可能性があるというのです。

歌声の普遍性と人類の進化

歌唱の進化は、言語の進化と密接に関係しています。言葉を持たない時代の人類も、歌を通じてコミュニケーションを取っていたと考えられます。この研究は、音楽が単なる娯楽ではなく、人類の進化において重要な役割を果たしてきた証拠を示しているのです。

まとめ

とはいうものの、歌唱が何故進化したのかについてはまだまだ謎の部分が多いのです。

音楽は、文化を超えて共通するパターンを持ちます。ピッチ、リズム、テンポ、メロディの変化は、世界中の楽曲に共通する特徴を持ち、人類の普遍的な感覚と深く結びついているのです。

私たちが「美しい」と感じる音楽は、実は進化の過程で培われた共通のルールに基づいているのかもしれません。あなたの好きな曲も世界のどこかの音楽とつながっているかもしれませんね!

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