よく、通る声を出せる人たちが気にかけていることがあります。「気にかけている」とは、言い換えると「表現する(アウトプットの)ために注意深く理解していく」こと。このように言うこともできます。
すなわちそれは2つ。
- 理解と解釈の仕方
- 音、声、言葉
です。
2つのことを考えながら通る声を出そう
まずは、理解と解釈の仕方です。いうなればこれは、抽象的な表現の理解と「直ぐにできる」の解釈の仕方ということです。
次に音、声、言葉については、音としての声と言葉としての声をどうとらえるかが大切になります。音としての声は音響(音声)学の立場から、言葉としての声は言語学の立場からです。すなわち、これら2つのことからアプローチをかけてゆくのです。
理解と解釈について(その1)
イメージの理解
それではまず、第一の「抽象的な表現の理解」の仕方から見ていきましょう。これはイメージの理解の解釈と言い換えてもいいでしょう。
例えば先ほど挙げた抽象的な表現の理解とは、次のようなものです。
- 腹から(肚から)声を出す
- 喉を開ける 喉を開く
が代表的なものとして挙げられるでしょう。イメージとして捉えるのか?体とイメージをリンクさせるのか?それはあなた次第です。ただしこれらはかなり抽象的な表現で、具体的に身体のどこをどうすればよいのかを指示してくれないと納得できない場合もあります。
これは「4.ボイトレ用語とその意味づけについての思い込み」に詳しいことが書かれてあります。
「直ぐにできる」の意味
つづいて「直ぐにできる」の解釈の仕方です。直ぐにとは「手軽に」という意味と「初期投資をかけずに」や「楽して」など、いろんな意味に解釈できます。
なるほど、楽にできれば結果も早く出せ様です。ところが、通る声を出すためには「急がば回れ」の方が良かったりもするのです。
音と声と言葉(その2)
それではここでもう一つの柱、音、声、言葉についてみていきましょう。これは更に細かく、
- 音としての声
- 言葉としての声
に分けることが出来ます。
音としての声
第一に「音としての声」です。
音には音声と非音声に分けられます。言うまでもなく、音としての声は音声に当たります。また、実践する深さによっては音響(音声)学の知識も必要になるでしょう。
その結果、高校の数学で習った(?)ことのあるサイン波などの三角関数の基礎も必要かもしれません。なぜそのようなことが必要かというと、通る声の要素を考えてゆく場合、声の要素を吟味しないとならないからです。声の要素を吟味するためには、音の要素を理解しないとなりません。じつは、音の要素で出てくるサイン波の波形こそが、音としての声を知るために最も基本になるからです。
その結果、「声を観る(可視化する)」ことに興味を示します。すなわちこれが音響分析アプリで音としての声を探求していくことになるのです。
言葉としての声
第二に「言葉としての声」です。
さて、言葉には国の言語を問わず音に対して必ず意味があります。ただし、恣意性といって音の形と言葉の意味は「たまたまそのように対応している」だけです。そのため、全く知らない外国語を聴いた時には「?」となり、意味が分かりません。
一方では、その意味を理解しようと相手の表情や身振り手振りなどを観察しようとします。さらに声の高さや大小、そして音色、さらに話す速度や間(ポーズ)の取り方などのパラ言語情報で理解しようとします。
特に音楽の分野で、意味が分からないのにボーカルの歌声と外国曲にとても感動した。そのような経験のある方にとっては、「言葉としての声」が分かってもらえるのではないでしょうか。そう、この時の歌声って「通る声」ですよね。