前回は「きく力を伸ばすために(その1)」という記事で
- きく(聞く・聴く・訊く)
- 読む
- 話す、歌う
- 書く
の中で一番エネルギーを使う技能は「きく」ことだと書きました。
人は、自分にとって都合の良い音しかきかない。そして、都合の良い解釈しかしない。
音楽でも人との会話でも、人から何かのメッセージが自分に与えられていると考えてみると、「きく」ことの重要性がハッキリ分かるといった内容でした。今回は更に深掘りをしていきましょう。
聞いているようで「きいて」いないことを減らすためには
音楽であれ言葉であれきいて理解するプロセスは、かなり複雑だといわれています。
人間の耳は素晴らしい構造になっています。ただその後にくるプロセス、どう理解するのか?ということが聞いているようで「きいて」いるかいないのかを分けていきます。
▼耳を侮ってはイケナイ!(ボイストレーニングだからこそ鍛えたい感覚)
ボーカリストとしての音楽の「きき方」
まず、ボーカリストとしての音楽の「きき方」です。当然メロディやまたは歌詞と考える人が多いようですが、それは間違いです。
ではまず何から「きく」のか?ですが、
- 曲の構成
- 次に使っている楽器
- メロディ、または歌詞の分析(アナライズ)
この順番に行っていきましょう。
1.曲の構成を聴いて書き出す
イントロ→Aメロ→A’メロ→Bメロ→サビ・・・
といった曲の流れのことです。詳しく書いてある記事もありますのでそちらを参考にしてください。
2.次に使っている楽器を知る
ここで注意してほしいのは、あなたが聞きとりやすい楽器を聞くだけではなく、分かる範囲内でできるだけ全部の楽器を書き出してみてください。ということなのです。
例えば、ベースという楽器が分からなかったら
何となく、低音でブ~~ン♪って鳴っている楽器が聞こえるぞ。
でもいいのです。
3.メロディ、または歌詞を分析する
人によってはメロディから入ってくる人もいれば、歌詞から入ってくる人もいます。それはどちらが正しいか?ではなく、どちらも正しいのです。
▼音楽の聞き方、聴き方、そしてアナライズ
言葉の4技能における「きき方」
l今度は言葉の世界で覗いていきましょう。きいて理解するまでには、頭の中でかなり細かな操作工程があります。
基本的には音楽でも言葉でも、フィルターを通してとどめられるエコイックメモリ(聴覚篇の感覚記憶)やワーキングメモリ(作動記憶、作業記憶)は、音楽を聴くことも人の話を聞くことも同じだといわれています。
上の図は言葉が音声として入力され知覚を通して理解されるまでのプロセスです。
大きく分けて
- 知覚
- 理解
です。
知覚の段階から理解の段階へ
耳からきこえてきた音について、どんな音が含まれているかが分かることです。耳できいた音声や楽器の音がどのようなものかを判断し、心の中で操作可能な音に変えることです。(音声表象、音韻表象)
理解段階では心の中に形作った表象を元に、様々な段階で処理をしていきます。
音を単語として処理(語彙処理)→
単語の意味から並び順(文法)を把握(統語処理)→
単語同士の整合性やつながりを判断する(意味処理)→
文の意味を発話の状況によって探る語用論(文脈処理)→
聞き手の持っている既有知識、これまでの経験等のデータベースによって意味内容を推測する(スキーマ処理)
コミュニケーションに温度差が出てくるのは意味、文脈、スキーマなどの処理方法が話し手と聞き手でかなり異なるからなのです。
▼イントネーションについて
▼ボイトレでしっかりと声を出しても伝わらない?!
シャドウイングを試してみよう
このサイトでも何回か記事として取り上げているシャドウイングの練習によって、あなたのきく力を伸ばすことも可能です。
基本的には文字表記を見ながらしません。聞こえてくる音声に対してほぼ同時に、またはほんの少し遅らせて同じ発話音声を再生する練習です。
外国語の学習では良く行われている方法ですが、これを日本語でやってしまえ!という事なのです。
これでホントに「きく力」を伸ばせるの?。
前に一度やってみたけど上手く出来なくて・・・。
大丈夫です。段階(ステップ)を追うごとに「きく力」が養われていきます。(話し言葉ボイトレの生徒さんに実証済み)
▼シャドウイング