前回は、『もっと自分の声が好きになる準備力』というタイトルで、準備力は練習する力だということ。さらに
練習>本番
本番での失敗の方が練習での失敗よりも少ない。この心持ちで準備力を養おう!
以上のような内容を確認しました。
▼もっと自分の声が好きになる準備力
本番力とは?
さて、今回の内容を結論からお話しすると次のようになります。
- 経験を積む度に自動でコントロールできる
- 自動化できると上達も早まる
- 上達するにつれて本番でのパフォーマンス力は格段に上がる
すなわち、本番力のキーワードとは、
経験、自動化、上達 です。これらの結論を元にして、話を進めていきますね。
ここで、この「自動化」という用語を説明しましょう。これは第二言語習得(SLA)の分野から引用したものです。でも、元々は認知心理学からの用語です。
【自動化モデル】
認知心理学の知見を第二言語習得に応用したモデル。言語知識は最初、意識的に学習され、宣言的知識として蓄積されていくが、徐々に自動化し、無意識にできるスキルとして手続き的知識(手続き記憶)に移行するという主張(1987)。 以下略
◆引用◆
泉 均・著/図表でスッキリわかる「日本語教育能力検定試験合格キーワード1400」晶文社
これは危険?!本番で感じてしまう2つの落とし穴
やはり場数は大切なのです。場数が少ないと(経験値が少ないと)、本番では次の2つのことが持ち上がってきます。そして自分の心にケンカを吹っかけてくるのです。これは自分自身の体験からも言えることです。
次にあげる落とし穴に十分に気をつけなければなりません。
その1.ベストを尽くそうとする
まず、本番ではベストを尽くそうとしないでください。何故なら、ベストを尽くせばそこで終わりだからです。あなたの歌や演奏はそのステージで最高のものが出来ればよいのでしょうか?まだまだ成長するのではなく、そこで終わりなのでしょうか?
ここで、受講生が私に言ってきた言葉が「言い得て妙」なので載せておきますね。
私は「ベストな答えを簡単には出したくない」性格です。
常にベターを考え続けたい、学び続けたいのです。(掲載:許諾済み)
素晴らしいと思います!それこそが成長ではないでしょうか?
その2.執着と承認欲求
続いて執着と承認欲求についてです。これにつきましては、いろんな意見があると判断します。ただ、僕の考えとしてはこうです。
あまり承認欲求に執着しないでください。承認欲求に執着しすぎるとその場での適応能力がなくなります。
あなたが歌うのは、まずお客さんに、聞き手に楽しんでもらうためであって、最初から自分を認めてもらうためではないはずです。ところが、
失敗しちゃイケない。上手く歌わなきゃ・・・。
こう感じた途端に周りが見えなくなります。そうです。本番で100%の完璧はナイ!これを肝に銘じておかなければなりません。言い換えると70~80点でOK。つまり、そのレベルでお客さんに喜んでいただけるスキルを磨いておくのです。
本番の歌唱力、演奏力
ところで、本当に実力のあるアーティストは「上手い」の一言では満足しません。僕のこんな話を聞いてください。
皆さんはお分かりでしょうか?(笑)
相手が良いと認めてくれた歌や演奏は、「上手い」という上っ面な言葉ではなく、五感を通して語られるということを・・・。
それでは、手っ取り早く本番力(本番での歌唱力、演奏力)をつけるためにはどうすればよいのでしょうか?
路上ライブ
そこで僕の持論です。
路上でライブをやりましょう。
これです!とにかく路上をやるといろんな体験が出来るのです。これは僕の友人である女性シンガー・ソング・ライターのMさんを観ていると、よく分かります。
彼女はいわゆる玄人ミュージシャンです。玄人だからこそ熟達の領域にある2つのことがハッキリと見えています。それは手際の良さと適応能力です。
まずは手際の良さです。これは場数を踏まないと積み上げていけない能力でしょう。次に適応能力。これにはもちろんいろんな適応能力があります。例えば、路上なのでどんなお客さんが見ているかは判断できません。相手の気分や感情をストレートに受けないようにしておくことも大切なのです。
例を挙げると
- 他のアーティストが望むものを柔軟に提供できる力
- お客さんが望むものを柔軟に提供できる力
- 与えられた環境の中で工夫してやろうとする力
- 路上ならではのリスク管理(危機管理能力)
などです。
何故路上ライブが良いのか?それは、これらのスキルは路上でライブをやることによって、イヤでも体感できるからです。昔と比べて制限はありますが、出来る場所を見つけていくと、大都市圏ではまだまだたくさんあると思います。
▼参考サイト
路上ライブのおすすめスポット・許可取りが不要な場所!【関東編】
本番力は反省力とセットで考えよう
一方、本番力は終わった後の反省力とセットで考えていかないとなりません。もちろん、反省が後悔になってはいけません。おまけに、直ぐに反省して直ぐに違う本番に臨まないとならない場合も出てきますからね。
自己肯定感を育む反省力
ここで警告。ダメダメ主義に陥って、反省ではなく自己否定になってしまう。こんなことがあります。これからは反省を自己否定と同じように考えてしまうことを止めるように持っていきましょう。
ここで、反省を自己否定感からではなく、自己肯定感から入るとどうでしょう?
自己肯定感にはいくつかあります。以前、自己肯定感について次のような考え方が出ていましたよね。すなわち、自己肯定感は「6 つの感」 で支えられています。さらに下位区分を表わすと以下のようになります。
- 自尊感情:私には価値がある
- 自己受容感:今のこの状態の私でいいんだ
- 自己効力感:私には出来る
- 自己信頼感:私自身を信じられる
- 自己決定感:私は自分で決められる
- 自己有用感:私は、人や社会の役に立っている
【参考】中島 輝 著『 何があっても「大丈夫。」と思えるようになる 自己肯定感の教科書』/SBクリエイティブ
この中の「3.自己効力感:私には出来る」を伸ばしてゆくことです。
以上、6回に分けてのワンバイブスパフォーマンス活声課®のメントレ論でした。
▼過去5回の記事