こんにちは。
今回は、『レベルアップしたいボーカリストが必ずやっていること(その2)』をお届けいたします。
前回は、楽器や道具の面からでした。
今回は、純粋にトレーニングをしていくための材料=曲に注目していきます。これは、素材選びと言い換えることもできるでしょう。素材選びはどのようにすればよいのか?
ただ歌いたい曲を選べばよいのでしょうか?
ある程度、実力が付いてくると、歌いたい曲=歌える曲ではない。これを十分に実感できますよね。
ここで、言葉ののせ方という観点から見ていくとどうなるでしょうか?
出来るボーカリストは「対照」に着目している♪
今回の内容をひと言で言い表すとすれば、
出来るボーカリストは、グングンとレバルアップするために「対照」に気をつけているんです。
ということです。
この対照とは一体、「何の対照」でしょう?
これは、言語と言語の対照のことを指します。日本語と他の外国語の言語ということですね。
あれ?「比較」じゃないんですね。どうして「対照」という言葉を使って、「比較」は使わないんで比べるんスか?
その質問、いい質問ですね。「比較」としないのは、今回の記事に挙げる外国語が、日本語とでは語族が異なるからです。
【語族】
比較:言語学で使う場合、一般に同じ源を持っている言語に対して比較という言葉を使います。例えば、スペイン語、フランス語、イタリア語は比較できます。英語、ドイツ語、オランダ語もそうです。
日本語と英語、日本語と中国語の場合は語族が異なります。なので比較という言葉を使わず、区別をして「対照」としているわけです。
はい。できるボーカリストは、日本語と外国曲の対照をしているのです。
▼「日本語と英語の歌 言葉から見るオモシロイ関係」言葉の比較と対照の記事はこちらも参照してください。
対照のさせ方ですが、やみくもに全く違う曲を対照させても意味はないと思っています。一番簡単で勉強できるさせ方は、
- ひとつの曲の中に日本語バージョン、外国語バージョンの曲を探して研究してみる!
- 対照のさせ方は、一つの曲で異なる言語バージョンを探す
これがおススメです!
次に、それらの例を出していきますね。
勉強できる対照曲、アレコレ
雪山賛歌/愛しのクレメンタイン
子供の頃、日本語バージョンを知っていたのですが、NHKの英語講座の歌のコーナーで、この曲が元々は英語の曲だったんだ!ということを後になって知ったのです。
この曲、英語の場合、恋人の死を悼む内容なんですね(涙)。上のように英語⇔日本語のような曲は、探していくとたくさんあります。その他では、
きらきら星/Twinkle, twinkle, little star
きらきらひかる お空の星よ
Twinkle, twinkle, little star,How I wonder what you are!
マザーグースの歌には日本語で同様として歌えるようにたくさん和訳されていますよね。例えば、マザーグースネタでは、まだあります。
メリーさんの羊
メェ~リさんのひつじ メエメエひつじ
Mary had a little lamb,Little lamb, little lamb,
イマジン
ポピュラーミュージックの世界でも、すばらしい対照があります。
12月になると必ず思い出す偉人ジョン・レノンと、ロックを日本語訳にするときに天才的な訳し方のできた忌野清志郎さんのお二人に、あちらからご登場いただきましょう♪
天国は なぁい ただ空があるだけ(忌野清志郎:訳)
Imagine there’s no heaven
後に来る Above us, only sky の部分をここに(始めの部分)持ってきていますね。この手法、オイシイじゃないですか!(^^♪
さらに、清志郎さんファンではなくとも、さすが上手いと感じるのは
You may say I’m a dreamer のフレーズを
夢かもしれない
に置き換えられたことです。
喜びの歌/交響曲第9番 第4楽章 歓喜の歌
続きましてクラシックの世界からです。ルートヴィヒ・ヴァン・・・さんにご登場いただきましょう(笑)。
皆さんもご存じかと思います。毎年今の時期、年末になってくると日本のあちらこちらで歌われている有名なあの大合唱の曲ですよ。
はい。ベートーヴェンの「交響曲第9番 第4楽章 歓喜の歌」です。
愛こそ歓喜に導く光
さえぎる苦難を越えて進まん(なかにし礼:訳)Freude, schöner Götterfunken,
Tochter aus Elysium
Wir betreten feuertrunken.
Himmlische, dein Heiligtum!
なるほど!僕が、小学校の頃、覚えたのは
晴れたる青空 喜び満ちて
小鳥は歌えり林に森に(岩佐東一郎作詞/文部省唱歌)
でした。
まぁ、それでもご当地ドイツ語で歌った方が壮大でカッコイイです。
え?なんですって?
ドイツが出てくればイタリアでしょう!
ロシアもいいですよ。
ということで「サンタ・ルチア」や「ロシア民謡」も良いと思いますよ。探せばまだまだたくさんありますよね(^^♪
まとめ:音のまとまりを理解しよう
今回、「対照」を出した理由は、
音のまとまりを理解して歌ってみよう。
ということです。外国語で歌ったのを聴くとかっこいいのに、日本語で歌ったのを聴くとイマイチ!これは日本語の持つ言葉のリズムが外国曲のリズムと異なるとり方をしているからです。
音のまとまりとは、時間的なまとまりを音で表しているモーラ(拍)と、聞こえ方のまとまりを音で表しているシラブル(音節)があります。
当時性(同じ長さの時間だと感じること)によって作られている日本語の音を、どれだけシラブル(音節)単位として歌えるかは難しいところです。シラブル(音節)単位とは、別の言い方をすると母音を中心とした音の聞こえ方のまとまりです。ここに音楽的な音符の長さもかかわってくるので、余計大変になります。
これを学んでいくと、
- 音符に言葉がのっているのか?
- 言葉に音符を当てはめているのか? が理解できます。
モーラやシラブルの用語を知っている知らないは関係ありません。知らなかったら覚えればよいだけの話ですからね。
歌ってみるとわかりますが、曲によってうまくいったりいかなかったりします。ただ、曲の中でこのような音のまとまりを理解、吟味、表現の出来るボーカリストが、グングンレベルアップ出来るわけです。