先日、日本音声学会音声学入門講座で「英語辞書の発音表記から最近のアメリカ発音を知る」というタイトルのセミナーに参加しました。
一見、難しそうなタイトルでしたが、
という視点で受講したところ、面白い発見がありました。今回、それを皆さんとシェアしたく、ここに記事を書き起こします。
- 講師は牧野武彦先生(中央大学教授)
- 参考資料は『グランドセンチュリー英和辞典』第4版 発音記号一覧
異論のある方もいらっしゃると思いますが、今回はこの英和辞典の発音記号一覧に基づいて話を進めていきます。
参加者は、学生さんから英語の教師、音声専門の先生、某予備校の英語講師、ボイストレーナーまで、音声に関係のある方々が集いました。
今回は、少し専門的になりますがご興味ある方は、ぜひ最後まで読み進めて関連サイトを参考にしてくださいね。
最近のアメリカ英語の発音事情!♪
英語の発音を確かめる時、耳からだとネイティヴの発した音声ですし、目からだと発音記号ですよね。
ところがこの発音記号そのものを詳しく勉強しようと思ったら、言語学(その中の音声学や音韻論)を学ばないとなりません。そこで音素とその発音記号(音声記号)を学ぶことになります。
しか~し!特に母音の発音表記は辞書や単語帳によって少しずつ違うんです!
これが発音を習得する場合の妨げになっています。先日行われたセンター試験の英語の発音問題でも物議を醸し出していたようですよ。
第1問-3/A-問3にそれが・・・。
✓ばか丁寧な高校英文法【速報!2019年センター試験英語 問題&解説】第1問(発音・アクセント)
✓センター英語解く得 速報!2019年センター試験英語 第1問 発音・アクセント 問題&解説
ご覧いただくと分かりますが、どちらも同じ内容です。解答は解答で提示されていますが「解答が違うんではないか?別の辞書には違う発音記号が出ていたので解答できない」といった内容でした。
ふたつのサイトの問題該当箇所の解答を見比べてみても、微妙に発音記号が違いますね。
もちろん、聞こえた音、聴いた音を表記するので、人によって発音が違うのは否めませんよね。日本にだって地域方言や人によって発音の違いはあるわけですし。
今回はアメリカ英語なので、
という視点よりも
といった視点からアメリカ英語の発音を観察していきましょう。
具体的に単語も載せていきます。
と思って頂ければ幸いです。そもそも発音の仕方なんて習っていない方もいらっしゃるかもしれません。だからボーカルレッスンでやる意義があるんですけどね。(*^▽^*)
標準的なアメリカ英語の発音は幾つかのタイプに分かれる
ことばは生きています。なので変わります。発音も生きているので変わってきています。
アメリカ英語はイギリス英語よりも方言差が少ない、といわれています。ただし、イギリス人から言わせると、訛りが強いそうですよ。
辞書に載っている英和辞典の発音表記が標準的なアメリカ発音とされていますが、標準はひとつではないということを覚えておきましょう。「標準」アメリカ英語という用語よりも、「一般」アメリカ英語という用語の方が分かりやすいかもしれませんね。
上段図:大まかに分けた発音の型
下段図:現在区分けされているアメリカの方言区分【引用】日本音声学会音声学入門講座より
ここで、一般アメリカ英語はどの地域の発音が元になっているのかを見ていきましょう。日本での方言区分と似ていますが、アメリカ英語の方言区分の創始者は社会言語学を勉強すると必ず出てくるウィリアム・ラボフ(William Labov)が有名どころと言われています。
さて、ライトハウス英和辞典では、ラボフの区分とは違いますが、大きく分けて3区分あるそうです。
- 中西部型
- 南部型
- 東部型
以前は、一般アメリカ英語の基準は中西部型とされていました。ニューヨーク州のある北東部は訛が強すぎるので一般ではないのです!カリフォルニア、アリゾナ、ユタ、ネバダ州などが一般的だというわけですね。ご存知でしたか?
ところが現在ではその区分が異なるようです。現在区分けされている分け方は次のとおりです。
- 内部北部型(上の図下段のグレー色とワインレッド色)
- 西部型(上の図下段のシアン色)
- 中部型(上の図下段のグリーン色)
- 南部型(上の図下段のカーキ色)
内部北部型が主流となりつつあるということです。
アメリカンロックやポップスにどう生かしてゆくか?
それでは、具体的な語を出してみましょう。ここでご紹介する単語は、意味が違っても発音の仕方は同じだよ。といった単語です。
発音記号はご自身の英和辞典で確認してください、出版社により表記記号が違うものもありますが、間違ってはいません。
英語という言語は音の違いが意味の違いを引き起こします。
でも結局のところ、聴いた通りに発音してみて発音記号と照らし合わせてみる。これが遠回りであるようで一番習得の近道ではないでしょうか?「急がば回れ」です。ここでもモニター能力が出てきます。
▼モニター能力について
同じ発音で良いと言い切れる語
- Sirius [síriəs] シリウス、天狼(てんろう)星
- serious [sí(ə)riəs] まじめな、本気の、真剣な、深刻な、等
このふたつは同じ発音で良い。
- merry [méri] 陽気な、快活な、浮かれた、お祭り気分の、等
- marry [mǽri] 結婚する、(相手と)結婚させる
- Mary [mé(ə)ri] メアリー、メリー(女性の名前)、聖母マリア
これらも最近のアメリカ英語ですと、同じ発音で構わないそうです。
さらにこれ、
- hod[hάd]の北部地域での発音 石炭入れ、れんが箱
- had[hæd]の西部地域での発音 (haveの過去形、過去分詞)
これら二つの発音はほとんど同じで構わないそうです。えーーーーっ!
鳥と手紙は伸ばすか伸ばさない、なのか?
- bird [bɚːd] 多くの辞書は下線部の発音表記が[əːr]
- letter [létɚ][létə] 多くの辞書は下線部の発音表記が[ər]
どっちでもいいじゃん!という気がしてきました。
何故なら、歌っている時には音符の長さがあるため単音で伸ばされるか伸ばされないかがあるからです。さらに音の高さも加わると、我々日本人がネイティブと同じように調音がしっかりできているかというと「?」だからです。
その昔、生徒さんだった帰国子女のOさんの言葉を思い出しました。
確かに、リエゾンなどのリンキングを絡めて歌っていると[θ][ð]よりも[t][d]の方が自然に聞こえる場合があります。
/r/ の音は舌を反らさない!
いわゆる接近音の[ɻ]のことです。最近では舌先を反らさないらしいんです!
僕らが発音を習った時には、有声歯茎接近音で舌先を上の歯茎の裏につかないように軟口蓋側に丸めて出すんでした・・・よね。
今ではどちらかというと、両唇軟口蓋接近音のように[w]に近い口の形をして、舌先を丸めず上の歯茎に近づけて発音すると、今流行りの(^_-)-☆[ɻ]となるんだそうですよ。
So cool!!!(^^♪
wh の疑問詞は?
whの疑問詞で[h]と[huː-]の音が入るのは、Who、Whom、Whoseだけです。Why、What、When、Where、Whichはほとんど[h]が入らずに[w-]となります。
いかがでしたでしょうか?大変でしょうが耳の訓練にもなりますので、時間をかけてやってみてください。手に入れて身に付けた歌の武器は、あなたの一生の宝となります。