これは素朴な疑問ですね。
検索してみると何故「あいうえお」なのかがたくさんでてきます。ここでは、発声や発音に関連することを自分なりにまとめてみました。
母音の並び方と「あいうえお」♪
母音の定義
まず、母音とは何だ?ということをおさえておきましょうか。
母音ってなあに?
と生徒さんに尋ねると10人中8~9人、ほとんどの方が「あいうえお」と答えます。
間違ってはいないんですが、突っ込んで
母音があいうえおになる決め手、要素は?
と質問すると、、、
え~と・・・。
???
はい。ここで、母音の要素をまとめておきましょう。
◆声帯振動を伴う有声音
◆ある程度、声が続く持続音
◆唇を丸めるか丸めないかで音が変わる
◆舌の位置で音が変わる(前後と高さ)
簡単に言うと、息の流れは妨げられず、口の形と舌の位置を変えることで「あいうえお」と発音ができるわけです。
では何故この順序?
これは梵語(サンスクリット語)の字母表に沿った配列によるものだからです。つまり「あ・い・う・え・お」の順番は悉曇学の音の順番に沿っているのです。
悉曇学とは、4~6世紀頃のインドの古典で、梵語(サンスクリット)・梵字に関する研究です。奈良時代に日本にはじめて入った悉曇学が,平安時代には真言密教とともに盛んになりました。
【梵語(サンスクリット語)】
古代インド・アーリア語に属する言語。
古典語として、南アジア、東南アジアで使われていました。
宗教色が強く、仏教、ヒンドゥー教、シーク教、ジャイナ教の礼拝用として使う言語です。
また、この「あいうえお」の順番は、文語、口語文法を習ったとき、
「あ」未然形(ナイ形)
「い」連用形(マス形)(テ形)
「う」終止形(辞書形)
~
で馴染みのある並び方ではないでしょうか?( )の呼び方は日本語教育での名称です。
それでは、まず「あ、い、う」から
まず、舌の緊張度が少ない「あ」を最初にしました。
続いて唇の両端をひっぱる「い」
そして、唇をぐっと突き出す「う」と並びます。
「い」→「う」唇を緊張させる位置が横から前へ。
この時、舌の位置は「い」→「う」の場合、前から奥へと移動します。
つまり、唇を開くほど前舌で上の位置に
唇を突き出すほど奥舌で上の位置になるわけです。
【注意】日本語の共通語発話の場合、唇を丸める音は「お[o]」だけです。
歌う場合は異なります。 「う[ɯ]」の発音記号は、[u]と誤解されがちですが、共通語の「う」は、非円唇後舌狭母音[ɯ]です。唇は丸めません。
上の図を見ると「ア[a]-イ[i]-ウ[ɯ]」の場合、舌の位置が一番離れていますね。
レッスンでは、割り箸を横にくわえていただき、「あ→え→い」「あ→お→う」と
舌の移動を確認してもらっています。
普通に母音を発音すると舌が動くのです。
びっくりする生徒さんが何人もいらっしゃいます。
「え、お」は元々二重母音だった!
「え、お」の場合、梵語(サンスクリット語)では、それぞれ[ai][au]という二重母音からきています。「え、お」は「あ、い、う」の後から配列されました。
ここで注意!
「あい」「あう」と書かなかったのは、連母音と誤解しないためです。
連母音と二重母音とは違います。同じ強さ同じ拍で発音されるのが連母音です。
あえて仮名で書くとすれば以下の書き方が分かりやすいでしょうか。え=アイ
お=アウ(このウは[ɯ]ではなく[u]なので、唇を丸めてください)
因みに、「アイ」や「アウ」をテンポを上げて発音、ある程度口を開いた状態をキープさせます。すると、
アイ → ヤイ → エイ → エ
アウ → ワウ → オウ → オ
どうでしょうか?笑
ところで、上代では8つあった日本語の母音。それが歴史の流れと共に音が変わり、今の数に落ち着きました。
母音は5つ ただし、、、
日本語のように母音が5種類という言語は多いようです。
スペイン語やイタリア語も母音が[a][i][u][e][o]の5種類です。
(複母音、二重母音を除いた単母音の数)
5母音体系の言語は多いが
ただ、アラビア語は[a][i][u]しかない3母音体系だといわれています。
また、琉球方言、与那国島の一部地域も3母音「あいう」で発音。「え」「お」がそれぞれ「い」「う」になってしまいます。
母音体系が6つ以上の言語もあります。
- 英語は8個
- ドイツ語も8個
- 中国語は6個
これは短母音、単母音だけの数です。長母音、複母音、二重母音は入っていません。
まとめ 母音の特徴
まとめです。短母音、長母音など母音の種類をすべて入れると、外国の曲を歌、発話するときには、口の中でもっとたくさん変化させる運動を行わないといけないのです。
☑ 母音は息の流れが妨げられない有声音
☑ 「あいうえお」に聞こえるのは、唇の丸め、舌の位置(高さ、前後)による
☑ 「あ、い、う」が先 「え、お」は後から配列された
ところで、日本語の母音は実は5つではなく、もっと多くあることをご存知でしたか?
それはまたお伝えします。